ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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本問では、一見すると背信的悪意者でないFが登記を先制しているので、Fが確定的に所有権取得→それをDが承継とも思えるのですが、ここは「背信的悪意者Dが「第三者」Fを藁人形として利用している」という特殊性があります。
まず、「第三者」に当たる者を介在させた背信的悪意者には、なお登記がなくても対抗できるとする有力な見解があります(『新ハイブリッド民法2 物権・担保物権法〔第2版〕』53頁)。すなわち、このような場合に「第三者」が確定的に権利取得して背信的悪意者が承継できるとすると、背信的悪意者は「第三者」を介在させれば権利取得できるとなり、背信的悪意者排除論を潜脱することができてしまいます。
そこで、本問のように、背信的悪意者Dが「第三者」Fを介在させた場合には、Dが「第三者」Fを藁人形のように利用していると捉え、「第三者」を藁人形として利用した背信的悪意者は「第三者」に当たらないから、なお登記なくして対抗できるとするのが有力な見解に基づく処理となります。
この有力な見解(「第三者」を藁人形にした背信的悪意者は「第三者」ではないので、登記なくして対抗可能)に依拠して処理していますので、F・Dそれぞれについて「第三者」該当性を検討します。