ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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本問のように、軽い犯罪の故意しかない者を利用した場合には、重い犯罪について間接正犯を認めることは可能です(『基本刑法Ⅰ』313~314頁)。この場合には、重い罪について一方的に支配・利用されているので、重い罪との関係では間接正犯といえるからです。したがって、構成要件ごとに規範的障害を見るという理解になると考えられます。
そのため、本問においても、殺人については認識のない乙を道具として、殺人罪の間接正犯と見る余地ももちろん可能です。このことは、答案作成上のアドバイス②にも書いてありますので、殺人罪の間接正犯として処理するルートもあり得ます。
しかし、本問の特殊性として、乙は積極的にあれこれ動いています。この乙の果たした役割の重要性を考慮するならば、殺人罪について一方的に支配・利用されたというよりも、殺人罪と重なり合う傷害致死罪の限度で甲とは積極的な相互利用補充関係にあるといえるので、重なり合う限度での共同正犯と見る方がおそらく完全解だろうといえます。
したがって、本問では乙が積極的に動いているという特殊性を踏まえ、一方的に支配・利用されて殺人罪の間接正犯になるというよりも、殺人罪と重なり合う傷害致死罪の限度では相互利用補充関係あるので共同正犯だろうと見立てて処理しています。