ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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両者は背信的悪意者は保護されないという点では同じでおり、その説明方法として、①177条の「第三者」の解釈論と背信的悪意者排除論という物権法からの説明(2-3-2)と、②背信的悪意者からの請求は権利濫用とする法定債権&民法総則からの説明(2-5-1)という違いになります。
まず、①の2-3-2は明らかに物権法だけの問題ですので、物権法からのアプローチをしています。ここでは、二重譲渡類似の関係となるので177条の問題と捉え、同条の「第三者」の定義を起点にして背信的悪意者排除論を使います。ここでは、物権法のアプローチで解いています。
次に、②2-5-1では、不法原因給付という事情がありますので、不当利得という法定債権を設問1で使っています。そして、設問2では不当利得という法定債権&所有権に基づく物権請求を考えています。すると、ここでは所有権に基づく物権請求に加え、法定債権としての不当利得返還請求権も合わせて想起されています。
そこで、物権請求&不当利得請求を共に封じるロジックとして、総則の規定である権利濫用を使っています。すなわち、背信的悪意者排除論はあくまで物権法の規定ですので、不当利得という法定債権にも直ちに妥当するわけではありません。
そのため、不当利得請求も合わせて封じるために、物権法・債権法両方に及ぶ総則の規定である権利濫用を使ったという違いが生じます。