ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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67~69行目は、事後強盗罪を「窃盗」という身分が必要な身分犯と考えた場合(身分犯説)、身分のない人が身分犯に加功した場合には、身分のないその人にも身分犯が成立するという65条1項の処理をしています。
まず、65条1項は、身分のない人が身分犯に加功した場合には、身分犯が成立するとしています。これを本問に当てはめると、窃盗の身分ない乙が、窃盗の身分ある甲に加功した場合には、甲と同じ身分犯である事後強盗罪になるという処理になります。
さて、事後強盗罪の本質は財産犯→窃盗という身分によって構成すべき犯罪になる流れは、事後強盗罪と共犯の処理について身分犯説・結合犯説の対立があるところ、身分犯説を採り65条1項でシンプルに処理するという点を述べています。
まず身分犯説は、事後強盗罪を真正身分犯と考えます(真正身分犯と考えない見解もありますが、試験対策では真正身分犯と考える説を採る方が処理が楽です)。この説は、事後強盗罪が「窃盗」でなければできない犯罪と捉え、真正身分犯だと捉えます。すると、窃盗でない者が事後強盗罪に加功した場合は、真正身分犯への加功として処理されます。この場合は、65条1項の述べる「身分のない人が身分犯に加功した場合は、身分犯と同じ刑で処理するよ」に当たるので、身分のない人も事後強盗罪で処断されます。
この身分犯説の良いところは、65条1項でシンプルに処断できる点です。つまり、事後強盗罪を「窃盗」のみができる真正身分犯と捉えるならば、それに加功した身分のない人は65条1項の場面に当たるので、同条項でそのままシンプルに事後強盗罪成立とできます。
この身分犯説に対し、結合犯説という考えもあります。
これは、事後強盗罪を窃盗+暴行の2つの行為に分けることを重視します。すると、窃盗でない者が事後強盗罪に加功した場合には、暴行の部分に加功したと考え、前半の窃盗については承継的共同正犯として処理します。
つまり、結合犯説は、窃盗→暴行という2つの行為に区切って事後強盗罪を理解するので、窃盗でない者が後から加功した場合には、後半の暴行に加功したと捉え、前半の窃盗については後から加功したとして承継的共同正犯のロジックで処理します。
しかし、受験対策として考えるのであれば、承継的共同正犯という難しい解釈をする結合犯説よりも、真正身分犯からの65条1項で処理できる身分犯説の方が書きやすいとなります。
このように、事後強盗罪の性質に絡んで、①「窃盗」という身分(主体)に着目して真正身分犯として処理するのか、②窃盗→暴行という2つの行為が続いている点にならって結合犯として処理するのかという問題意識があります。
そしてここでは、事後強盗罪の本質は財産犯である→財産犯とは平たく言えば物盗りである→物盗りとは「窃盗」のことであるので事後強盗罪も「窃盗」という点に着目する→事後強盗罪とは「窃盗」という身分がある故に行える犯罪であるとイメージで、身分犯説を採用しています。