ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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本問では、どちらも言い分は金払えですが、トラブルの性質が異なりますので、法的構成が違ってきます。
まず、問1後段では、Bの取消しによって遡及的無効(121条)となりますので、AC間は履行不能となります。すると、甲土地という物自体を引き渡すことはできなくなっているので、物が駄目ならお金で解決となり、履行不能からの解除と損害賠償請求を行います。
ここでは、当事者がACであるところ、転売を受けたCは甲土地を入手できないので履行不能となり、この履行不能というトラブルを解決するために、債権法の規定である解除・損害賠償を使っています。そして、このAC間は問2の取消しの場合ではないので、121条構成とはなりません(理由は最後の方に後述します)。
次に、問2では、BがAにあることないこと吹き込んでいるので、AB間には契約の当初から問題があったとして、錯誤取消し・遡及的無効&原状回復義務を法律構成として使います。ここでは、問1後段と異なり、解除は使わず、錯誤取消しと原状回復、それに加えて不法行為を使います。
さて、両者の法律構成の使い分けとしては、①問1後段のAC間は履行不能からの解除&現状回復義務と損害賠償、②問2のAB間は錯誤取消しと遡及的無効&原状回復+不法行為という使い分けになります。
両者の違いは、当初からトラブルがあったかor事後的にトラブルになったかという点になります。
まず、①のAC間では当初はトラブルがありません。AはBを騙していますが、あくまでBを騙しただけであって、AはCを騙しておらず、Cも特にAから何かされたわけでもありません。しかしその後、Bが取り消したことで遡及的無効となり、履行不能となります。
このように、当初は詐欺・錯誤・強迫といった意思表示のトラブルは当事者間(AC間)にないが、事後的に物を渡せなくなった等の場合には、事後的トラブルの問題と考えて、債務不履行(履行遅滞や履行不能、不完全履行)の問題とし、解除や損害賠償を使います。
次に、②のAB間では、当初から錯誤・詐欺という意思表示のトラブルがあります。BはAにあれこれ吹き込んでいるので、Aは契約の当初から錯誤・詐欺という意思表示のトラブルを抱えています。このように、当初から錯誤・詐欺・強迫といった意思表示のトラブルが当事者間(AB間)にある場合には、取消しからの遡及的無効と原状回復(121条系のルート)となります。
すなわち、「当初から当事者間に意思表示のトラブルある場合」には「取消し+遡及的無効&原状回復(121条系ルート)」、「当初は当事者間に意思表示のトラブルはないが事後的に債務不履行というトラブルになった場合」には「解除&原状回復(540条系ルート)+損害賠償(415条)」という使い分けになるのです。
換言すると、当初からトラブルあれば取消し、事後的なトラブルであれば解除という使い分けになります。