ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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両者は異なる要素であるため、ズレることも想定されます。
まず、主観的因果関係とは、その表意者個人の認識を基準にして、その錯誤がなければその意思表示をしなかっただろうということを意味します。ここでは、その表意者の主観を基準にしています。
次に、客観的因果関係は、表意者ではなく通常人を基準にした場合でも、その錯誤がなければその意思表示をしなかっただろうということを意味します。この客観的因果関係は重要性の要件とも呼ばれ、主観的因果関係がある場合でも、その錯誤が重要といえないのであれば要件を満たさないとなります。すなわち、その表意者であれば意思表示をしない場合でも、通常人を基準とするなら意思表示をするといえるのであれば、客観的因果関係(重要性)が否定されます。
ちなみに、主観的因果関係がない場合は、そもそもその錯誤に基づく意思表示がないと考えられますので、主観的因果関係があるうえで(錯誤に基づく意思表示があるうえで)、その錯誤が重要か(客観的因果関係があるか)という流れになると思われます。
したがって、例えば、売主を人違いで間違えたまま契約をした場合、表意者からすれば売主が違っているので意思表示しなかったといえる場合でも、通常人を基準とすれば意思表示をしても問題なかろうというのであれば、客観的因果関係(重要性)が否定され、錯誤の要件を満たさないとなります。
この客観的因果関係(重要性)が否定される場合としては、売主や賃貸人の同一性の錯誤がそれに当たるとされています。