ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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挙げていただいた通り、殺害行為者以外との間では要保護性がない等を理由として、遺失物横領罪又は占有離脱物横領罪になると考えられています。
両者の違いについては、刑法の法益保護機能と自由保障機能とのバランスから考えてみるのが一手です。
まず、法益保護機能からすれば、殺害直後の被害者の占有は法の保護に値するとして、窃盗罪を成立させるべきだという価値判断になります。これは、殺害により被害者からその財物の占有を離脱させた自己の先行行為を利用して奪取したという一連性も重視することと相まって、窃盗罪にすべきとの価値判断になります。
他方で、自由保障機能からすれば、何でもかんでも刑罰で罰すべきではなく、必要最小限にすべきだという価値判断になります。
そこで、両者のバランスを考えて、殺害行為者との関係では生前の占有を保護して窃盗罪とし、それ以外の行為者との関係では窃盗罪までは成立させず、遺失物横領罪又は占有離脱物横領罪にとどまるとなります。