東京都立大学法科大学院を受験される皆さんへ
試験日が近づいてきました。
傾向と対策について詳しく解説します。
※ 本文は「である調」(常体)になっています、あらかじめご了承ください。
〒104-0053 東京都中央区晴海1-2-2 晴海キャンパス内
※本部キャンパスは八王子市南大沢にあるが、法科大学院の所在地はそことは異なる点に注意。
旧東京都立商科短期大学の所在地に置かれ、キャンパス内は晴海総合高校の学生が使用・共用している場所が多く存在する(一例として食堂部分のある1階フロア)。
2019年頃より、食堂・購買廃止。図書館書籍の貸出は不可。南大沢からの取寄せも不可。
なお、晴海トリトンスクエアにあった提携書店(くまざわ書店)は2016年頃に撤退済。
ア.入学に必要な経費
・第1次入学手続:入学金(都民141,000円、都民以外282,000円)
・第2次入学手続:授業料 663,000円
→2022年5月現在、日本全国の国公立法科大学院のなかで福岡大学と首位を争う程度に費用負担が軽い(未修については1位、既修については2位)。
また公立大学ゆえに、経済的理由に応じて学費免除制度等も設けられている
イ.授業料免除等学費減免制度について
入試成績に応じた授業料減免制度はない。
しかし、世帯収入によって学費全額又は半額免除される場合がある。
ア.試験日
法学既習者コース:①筆記試験2022年10月29日(土)
②口頭試問2022年11月26日(土)
法学未修者コース:①筆記試験2022年10月30日(日)
②口頭試問2022年11月27日(日)
イ.合格発表日
筆記:2022年11月9日(水) 最終:2022年12月7日(水)
(ア)大きな変更点はない
→2015年度入試までは商法が入試科目として採用されていた。昨年度入試においてこれを復活させ、従来型の入試科目に戻した。
(イ)民事訴訟法・刑事訴訟法の出題形式が短答式試験から簡易論述式試験に変更
→上記同様、昨年度より2015年度入試以前の出題形式に戻すこととなった。
※問題形式などは、昨年度入試および2015年度以前の入試を参照願います。
(ウ)考察
入試担当となる専任教授陣については民法を除き、2015年頃とさほど変更はない。特に昨年度より追加された商法科目や民事訴訟法については、教授陣の顔ぶれにそれほど変更はない。したがって、これらの科目については2015年度入試以前であっても、同法科大学院入試の傾向を知るうえで非常に参考になると思われる。
なお配点については、上三法は各100点、下三法は各30点であり、上三法の重要性については従来と同様である。
エ.昨年度入試実績
http://www.law.tmu.ac.jp/ls/admission.html#1st_sel_result
上記リンクを参照願います。
未修者コース:10名
既修者コース:30名(特別選抜の対象者10~15人程度を含む)
昨年度入試と比較し、全体の募集人員数に変更はない。他方、特別選抜入試制度導入により内訳に変更が生じ、一般選抜枠の募集人員数は減少となっている。
しかし、これによる影響は少ないことが予想される。以下、理由を記載する。
たしかに公立大学であるが、東京都の管理下にもあり、同公共団体の影響力は非常に強い。事実、大学の名称を頑なに旧名称に戻さない方針であったものの(同大学の学生アンケートや過去の質疑応答参照)、都知事の鶴の一声で現在の東京都立大学に大学名を変更した過去がある。
また、同大学のロースクール維持のためには合格実績は勿論、経営面も判断される。また予算配分は法科大学院の実績(定員数や入学者数等)によりなされる。
さらに、入試時期や過去の早期卒業者による受験数・入学数を考えると、特別選抜に多数の人材が集中するとは考え難い。
そして、(公立は補助金対象校ではないものの)近年の実績を見る限り倍率2倍を確保するという観点・定員充足率の問題もある。
このように考えると、定員数以上の合格者を出す必要があることから、従来と同様の運営をするものと思われる。そのため、受験生は過度に心配する必要はない。
昨年度の課題と比べて、カッコ内の事項が追加され、多少は読みやすい課題となった。しかしそれでも、志望理由について下記のとおり不明瞭な点がある。以下は昨年度の案内と同様であるが、今年度においても共通するため記載する。
課題は短文式であり、「志望理由」を課す意図を把握することが非常に難しい。すなわち、ここにおける志望理由とは「法曹」志望理由なのか、それとも「東京都立大学法科大学院」志望理由なのか、この短文だけでは把握し難いからである(つまり、受験生に対し「何の」志望理由について記載を求めているのか、出題者側はわかったとしても、受験生にとっては補語が明確ではないため、わからない状態である。)。
しかし、①過去の口頭試問(面接)の質問内容では、東京都立大学を志望する理由について尋ねられている。また、②目指す法曹像の中に「目指す」からにはその動機も理由も当然書くであろうという出題者側の意図(彼らの主観による当然の前提)であれば、③そして「その」という指示語をつけていないという点を強調すれば、志望理由とは都立大学法科大学院志望理由を指すことになろう。(もっとも句点がついていなく一文となっている点は、上記記載を否定する要素となり得よう)。
なお、合格者ステートメントを見ると、“法曹志望動機と法曹像を記載したうえで、その目的を達するために都立大を志望する”という理由を記載するものも多い。
どちらにも解釈できる以上、他者と差をつけられないためにも、合格者ステートメントのように両方を書くことをお薦めしたい。
この場合、まずは目指す法曹像の中に当然として法曹志望理由(動機)を記載することとなる。これは、ステートメント課題文の括弧書き記載のとおりである。2年課程においても、これを記載することは変わらない。
そして、上記前提に則る限りにおいて、趣旨一貫とした文章を作成する観点から、同校志望理由については「その法曹目的・法曹志望動機を達するためにどうして東京都立大学法科大学院でなければならいのか・どうして東京都立大学法科大学院を志望するのか」という視点から数行程度説明することになる。すなわち、都立大学の志望理由についても数行程度触れる必要があるということである。
課題文の長さを考えると、ステートメント自体の配点は大きくないように思える(恐らく口頭試問の際の素材として利用する目的程度のように思える)。それでも、きちんと問いに答える姿勢と課題文を的確に把握することを忘れずに、ステートメント課題に取り組んで欲しい。
(1)入試総論
2022年度入試はコロナウイルスの蔓延下であったが、通常の入試が行われた。今年度についても、仮に疫病が蔓延したとしても追加試験の開催は期待できない。体調管理に注意したうえで、相応の対策を講じて受験に臨んでいただきたい。
既修者試験においては、近年法科大学院試験六法(第一法規株式会社)https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/104240.html)が貸与される。
市販のポケット六法やデイリー六法等と異なり、特に試験科目である刑事訴訟法は条文の見出しのないことに注意が必要である。本番中に戸惑わないためにも、特に刑事訴訟法については図書館や書店で一読の上、条文の位置や構造を把握しておきたい。
なお、予備試験六法や司法試験六法についても、掲載法令数の差はあるものの、法文の記載や条文の見出し、仕様は法科大学院試験六法と共通している。
・憲法
昨年度入試も含め、憲法は同法判例百選に掲載された判例を素材とした事例が出される傾向がある。なお憲法についてはメディア出演者を含め有名な教授が2名程いらっしゃるが、出題形式に変更はないことや著書の内容と比較する限り、作成担当は現法科大学院専攻長である可能性が非常に高い。
入試においては百選の判例を一読程度で良いので、判旨を理解しておくと非常に優位に立てる。一昨年度入試では新しく百選に掲載された判例から出題されており、新収録判例も重要であるが、主に人権分野でメジャーである判例をきちんと押さえておくことを強く勧めたい。
なお『判例百選』のような書籍については受験期直前に読むと、試験本番まで頭に残ることも多い。受験生は最終的な見直しとして同書籍を読み、試験本番に臨んでいただきたい。
・民法
民法については2014年度、2015~2019年度、2020年以降では傾向が異なる。2019年度以前は要件事実を意識した整理を促すような問題も多く、特に2015年度~2019年度の出題者は司法試験委員経験者である元裁判官教員である可能性が非常に高い。また、教授は変更されているものの、問いの形式からして近年も引き続き裁判官ないし実務経験者が作成しているように思える。
主に請求の適否について検討させる問題であるが、このような問題については訴訟物や請求原因・抗弁事実などを訴訟法上の要件事実に基づき具体的に指摘出来なくとも、主張に対しどのような反論が考えられるかなど一定程度の理解が必要である(例えば、どのような契約に基づく請求か等の根拠を指摘するなど)。
民法という科目の特性上、論証パターンというよりも、条文の要件や各要件の定義を理解することが必要不可欠となる。そして、条文の文言に則し、各請求の当否を検討していくことが重要である(そしてそれは、実務家教員が民法科目を指導する傾向にある都立大については特に強く求められるように思える)。
わからない問題であっても、きちんと条文や法的構成を検討し、どのような請求が成り立つのか条文ごとに丁寧に検討していけば、結論等が異なろうとも一定程度の点数を獲得することが可能となるので、受験生は焦らずに対応することを望みたい。
なお、問題としては判例百選の問題がそのまま出題されるわけではないが、論点などは百選記載のものから出題される傾向にある(例として「契約締結上の過失」)。百選を読む必要性は憲法よりは劣るものの、基本書や予備校本でも構わないのできちんと基本判例の知識を習得して頂きたい。また、いわゆる論証パターンを使用する際は、どの条文のどの文言の解釈として、この論証が書かれているのかを強く意識して、総復習することを強く薦めたい。
・刑法
刑法については2019年度以降とそれ以前とでは、設問形式が異なる。元来は「〇〇の罪責を論ぜよ」というものであったが、2019年度以降は見解対立を問う問題が追加された。刑法科目についても前田雅英教授の退官等主要な教授が退官し再任用されていることを鑑みると、問題の出題者についても後継者に譲っている可能性が非常に高い。次に、同校の刑法科目の試験問題は、刑法科目の前任者木村教授の著書である『演習刑法(第2版)』の影響が強い。そして異なる見解から意見を述べさせる問題については、近年の司法試験刑法科目の問題形式の影響を受け、作成しているように思える。もっとも退官した教授が法科大学院の問題を作成したとは非常に考え難いこと、また上記教授らが専任教授として在籍していた数年前と比べると出題された問題の個性がないこと(非常に薄い)、そして現在の刑法科目入試は司法試験の設問形式に似せて入試問題を作成しようとする傾向がある。これらのことから、作成者は新司法試験を受験したことのある経験者、または上記教授の著書の作成についてその補助ないし校閲経験のある方(個人的には、両方を満たす方であるように思える)のように思えて仕方がない(また実務家であるとも言い難い)。
もっとも、そのような教授または准教授が教場で講義しているのか等の実態については著者として把握していないので、あくまでも著者らの想像である旨ご理解願いたい。
しかし、問題形式が変更されたといっても、実際は数年前の司法試験刑事系第1問を模倣したものである(これまでも、〇〇の罪責を論ぜよというのも当時の司法試験刑事系第1問を模倣したものだった)。そうすると、今年度入試についても昨年度入試等と同様の形式で出題されることが強く想定される。
見解対立の問題については、「〇〇が成立するという観点から論ぜよ」等と書かれている問題は、誘導に則ることで解答することが可能である。たとえば、正当防衛が主張する見解と誤想防衛が主張するとの見解対立を問う問題では、①正当防衛の要件をきちんと検討すること②正当防衛の要件を満たすことを前提として、責任阻却事由すなわち誤想防衛が認められるかを検討するというものである。何も難しい学説の対立を問うものではなく、きちんと要件に基づき、問題文の事情を用いて検討すれば合格点に達することが可能である。
なお上記は昨年度入試前に公開した内容であるが、2022年度の同大学法科大学院入試で出題を概ね的中させている(誤想防衛は出なかったが)。
近年は総論については共同正犯など共犯分野、正当防衛など違法性阻却分野から出題されていることからすると、今年は共犯からの離脱、共同正犯の成否など共犯分野を全般的に総復習すると良いように思える。またこれまでの出題のない分野であるならば、問題の傾向からすると中止犯の成否などについて復習しておくと良いように思える。
仮に未知の問題が出題されたとしても、受験生は落ち着いて、事実を拾うことは勿論のこと、きちんと条文を適示し、その要件を検討して、解答していただきたい。
・商法
2015年度入試以降、入試科目から排除されていたが、今般専攻長の交代とともに復活した。後に触れる民事訴訟法や刑事訴訟法と同様、簡易論述式試験となっており、配点は30点満点となっている(主要三科目は各100点満点)。
商法科目の教授の顔ぶれは以前と変わらないことから、出題者の変更はないと思われる。そうすると、出題傾向や問題形式を知りたい場合は、2015年度以前の入試問題を参照することをお薦めしたい。
主に会社法分野から出題される。商法や手形法については出題範囲から除かれることは、都立大学側が「①商法は会社法の分野から出題します。」と明記していることからもわかる。これは、都立大側の必修カリキュラムで商法総合ⅠⅡは必修となっているが、他方商法総合Ⅲ(手形法・商法分野)は選択科目となっていることを受けての出題かと思われる。都立大としては、あくまでも商法や手形法は本試験等に不要と考えているようにも読める。
簡易論述としていることこともわかるとおり、今年度入試についても2015年度入試と同様、会社法の用語について説明を求める程度のものであることを想定している。そのため、まずは条文で該当するところを探す能力や、定義を覚えることを薦めたい。それが出来ないと、問題に太刀打ちできないからである。また、条文上にはない原理原則(例えば投下資本回収の原則等)といった概念もきちんと覚えておくと良い。
難解な問題は出されない反面、定義や理解力がないと、歯が立たなくなってしまう。基本事項だけでも構わないので、基本書(例えばリーガルクエスト会社法)で太字となっている用語や定義をきちんと押さえ、書けるようにしたい。
論証よりも用語を理解し、基本事項をきちんと暗記して書けるようにすると良い。
・民事訴訟法
民事訴訟法については、昨年度より短答式試験から簡易論述式試験に変更された。つまり、2015年度入試以前に戻った形である。そして東京都立大学側は入試における出題範囲として「上訴及び多数当事者訴訟を除きます。」と案内している。(http://www.law.tmu.ac.jp/ls/admission.html 「■3年履修課程・2年履修課程(一般選抜・特別選抜(開放型))の第1次選抜試験科目・試験方法」項目参照)。
簡易論述といっても、民事訴訟法の場合は誘導なく概念の説明を求めさせる問題が出た場合は、かなり難しいうえ、出題者の意図と異なる解答は多数存在するものと思われる(例として、「弁論主義と処分権主義の具体的説明と異同(2015年度入試)」)。また、具体的説明とくると、具体例などの記載も必要となってくることから、根本的な理解力が求められる。(ただし、この問題などを見る限り、法科大学院入試受験生が民事訴訟法の1行問題に完璧に対処し、教授が満足するような答案を書くことが出来た受験生はほぼ皆無のように思える)
そのため、説明にあたっては語句の定義をまずは覚えるとともに、具体的事例も併せて理解する必要がある。どのような場面で(訴訟係属前か後か、判決前か判決後かなど)、どのように運用されているかということをきちんと覚える必要がある。
概念を説明するためにはまずは定義を書けるようにする。これが合格するための最低限のレベルである。
そして具体例の説明については、(出題者は基本書を読んでいることを想定しているであろうが、その基本書を根拠に良いところを抜粋している)予備校の入門・基礎講座などのテキストにも載っているような典型例を覚えておくと良い。その際、基本書で太字となっているもの・予備校で太字となっている概念をピックアップし(例:弁論主義の第1テーゼ等)、自分の頭で即座に定義と具体的な例を挙げられるようにしておこう。
・刑事訴訟法
刑事訴訟法についても民事訴訟法と同様、昨年度より短答式試験から簡易論述式試験に変更された。つまり、2015年度入試以前に戻った形である。そして都立大側は刑事訴訟法の出題範囲として「上訴を除きます。」と案内している。(http://www.law.tmu.ac.jp/ls/admission.html 「■3年履修課程・2年履修課程(一般選抜・特別選抜(開放型))の第1次選抜試験科目・試験方法」項目参照)
昨年度の入試問題の作成者と2015年度入試時とを比較する。現在の刑事訴訟法の専任教授は2015年当時准教授であり、他方で2015年当時は前田雅英教授がまだ専任教授として講義を担当していた時代であることから、少なくとも今年や昨年度と2015年頃とは入試作成者が異なる可能性が非常に高い。しかし、現在の教授も前田雅英門下生であることや、あくまでも簡易論述式試験であり30点満点しかないこと、下三法の入学試験は同時刻に行われることを考慮すると、今後とも出題される問題形式は統一してくることが予想される。そうすると、2015年当時と、問題の形式やレベル等さほど変わらないように思える。
つまり、こちらも他の科目と同様、難しいことを聞いているのではない。出題者による法科大学院の講義についてこれるだけの最低限の知識を受験生が有しているのかを判断するために出題していることが強く伺える。
2022年度の入試問題では受験生の理解力などを問う問題であった。なにも論点・論証パターンを暗記していなければ解けないような問題は出されていない。出題者は何も受験生を落そうとしているわけではなく、受験生であれば当然知っているであろう(と出題者が考えている)基本的な概念や定義をきちんと理解しているか、根拠となる条文・法規をきちんと指摘できるかを問う傾向にある(一例として2015年度入試「任意同行の適法性について」)。具体例や問題となる具体的場面を想起できるかという点は民事訴訟法と同様である。また、基礎力や全体的な理解力を問うものであり、受験生を落そうとする問題ではない。
対策としては、基本書で太字となっているもの・予備校で太字となっている概念をピックアップし(例:伝聞証拠とはなにか)、自分の頭で定義と具体的な例を挙げられるようにしておこう。大学受験で作成した方が多い単語カードのようなもので構わないので、まずは定義をきちんと把握して書けるようにしたうえで、説明できるようにするとよい。
仮に「なぜ刑事訴訟法では令状主義が採用されているのか」といったものが出題された場合…、令状主義について定義を述べることも必要であるが、それだけでなく、たとえば同主義が採用されていなかった場合にどのような不都合・不利益が生じるのか、またこれが問題となる具体的な場面を想起できる必要がある。このような問題が出たとしても、基礎力や定義などを含めて理解しておけば、上記思考過程を辿ることでテスト本番でも説明できるようになる。
仮に未知の問題が出たとしても、焦らないようにして欲しい。
なお入試で用いる法科大学院試験六法は、通常のデイリー六法等と異なり、刑事訴訟法については条文見出しがない(理由については省略)。特に都立大学法科大学院を第一志望とする受験生はパニックにならないよう、事前に法科大学院六法や予備試験六法等に見慣れておくことをお薦めしたい。
(3)入試各論 3年履修課程(いわゆる法学未修者)
東京都立大学の未修者入試の問題文は、恐らく著作権法上の問題であろうが、省略されている。そして年度により出題内容が異なるものの、下線部の箇所についての説明問題や、問題文の理解を前提としたうえで、受験生の意見を述べるよう求めるものが多い。
日々の対策方法については、BEXAにて連載済の『第三回 筆記試験対策について(法学未修者コース入試編)』(https://bexa.jp/columns/view/300)で述べたとおりである。
東京都立大学法科大学院では出題の趣旨が公表されているが、採点基準や解答例に関する案内は掲載されていない。そこで日々の演習や模試代わりに利用するのに最適な過去問として、上記記事で案内している法科大学院の入試問題を用いることを案内したい。リンク先にて案内したロースクールの入試問題は出題の趣旨だけでなくロースクール公式の解答・解説も公表されている。ロースクール側が受験生に対しどのような解答を求めているか把握する材料としても適切であり、日々の小論文問題演習の材料として利用頂きたい。
未修者入試一般にいえることであるが、既修者入試問題と比べてとにかく問題文の量が多い。そのため、集中力を維持させるとともに、設問内容を適切に把握する能力が必要不可欠である。
評論文は基本的に、主張箇所(claim)と、それを肉付けする具体的事実と根拠箇所(data(evidenceと表現するものもある),warrant)にわかれている。後者はあくまでも筆者の主張を正当化させるための事実や証拠に過ぎない。
メリハリつけずダラダラとよんでいると、読解中に集中力が切れ、内容を理解できず、問題文の主題と全く異なる解答を作成しがちである。そうすると、筆記試験の成績は期待できず、最悪の場合筆記試験で不合格となってしまう。
問題文を読む際は、①まずは問いを正確に把握する、問われている内容が何か・キーワードは何か正確に把握し、②具体的な事実や例(例えば歴史上の人物の意見)を挙げている個所は、あくまでも筆者の主張・意見を補強する事実に過ぎないこと(もちろん、筆者がその意見を批判するために用いる場合もある)、③筆者がどういう立場を採用しているのか文章全体から把握する(要は頭の中で要約する)ことが必要である。要は、不必要に具体的事実と根拠(data, warrant)が記載されている個所に引っ張られるのではなく、具体的な例を挙げた後又は挙げる前提として出てくる「筆者の主張」を適切に把握することが重要である。
そのため、問題を解く際には、筆者が問題文で挙げる具体例に引っ張られ過ぎて、問いで聞かれている事項を見失わないよう注意したい。そして、なによりも試験時間中は集中力を切らさず、問題文の内容を適切に把握して欲しい。
その他詳細については、『第三回 筆記試験対策について(法学未修者コース入試編)』など一連の連載を適宜参照し、不安を解消していただきたい。特に第三回では法科大学院入試における小論文対策の方法や教材について案内しているので、入試までコツコツと小論文対策をして頂きたい。
口頭試問というと、受験生は面接官から課題を与えられ、それに対して意見を述べるものだと想像するだろう。しかし、例年東京都立大学法科大学院では面接の際に課題は与えられない。いわゆる志願者面接であり、教授2:受験者1の形式で行われるのが慣行となっている。
2017年度入試頃までは、2次試験(現在の1次試験に相当する筆記試験)を受験したものはほぼ3次試験(現在の2次試験に相当する口頭試問)に通されており、その面接を通じて総合的に合否判定を出すのが都立大学の傾向であった。しかし近年、筆記試験でもある程度厳密に合否判定を下している。
2020年度入試前後までは、出願をするものの受験しない者も一定割合いた。今年度についても、9月中旬の出願後に合否判定が出る早稲田大学法科大学院に合格した場合に、当大学院を受験しない者がいることが強く想定される。
もっとも、上記はあくまでも過年度のことである。受験生は1次試験から全力で臨まない限り、口頭試問を受験することが出来ないという認識で、試験に臨んで欲しい。
口頭試問(以下「面接」と表記する)当日は7階にある大講義室に集合するのが通例となっている。大講義室にて待機後、時間前に係員の指示に従い、4階へ移動。普段は教室として利用されている4階小教室が面接会場となる。
数分程度廊下前で待機後、「どうぞ」という声とともに、ノックして入室する。
面接官は専任教授2名。「専任」と記載した通り、基本的にはパンフレットに顔写真や名前が掲載されている教授が面接官となる。1名は主査、もう1名は副査として主査をサポートする形となる。そのため、主査がメインとなり質問をしてくる。1次試験に突破した方は、緊張しないようパンフレット等で一度教授の顔を見ておくことをお薦めする。
教授のタイプとしては、気さくな方から、斜に構える方(特に副査に多い)まで様々との情報もある。これまかりは面接官次第なので、受験生は相手が自分の発現に対し頷かないからといっても気落ちせず、最後まで乗り切ってほしい。
なお面接時間は10分~15分程度である。
面接で主に聞かれる内容は以下箇条書き記載のとおりである。受験生は相応の準備をして欲しい。合格者等にヒアリングした限り、全部聞かれるということではなく、せいぜい下記記載のいずれか5点程度とのことである。
・なぜ東京都立大学か、どのような点に魅力を感じたのか
・なぜ法科大学院なのか、予備試験についてどのように考えるか
・学生時代の経験、ゼミに関する質問(社会人は社会人時代の経験について)
・法律科目の勉強方法(予備校利用など。他学部生が既修者コースを受験する場合)
・将来の理想とする法曹像、なぜ法曹を志望しようと考えたのか
・ステートメント書類に記載した事実についての質問
・学費の拠出先(ただし、志願書にも欄はあるので確認程度)
・(担当教授による)受験生が考える筆記試験の出来について、得意科目
・(社会人の場合)なぜ辞めてまでロースクールに入学しようと考えたか
・併願校について
以上
2022年10月15日 藤澤たてひと
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