所得税法60条の判例

ゴルフ会員事件(H17.2.1)と土地代償分割事件(H6.9.13)では取得費に含まれるかの結論を異にしていますが、これは所得税法60条の趣旨の捉え方に起因しているのでしょうか。
2018年5月7日
選択科目 - 租税法
回答希望講師:宮崎貴博
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
宮崎貴博の回答

回答が遅れてしまい申し訳ございません。以下、回答をさせて頂きます。

ご指摘の通り、ゴルフ会員事件(H17.2.1)と土地代償分割事件(H6.9.13)では取得費の取り扱いが異なりました。

前者ではゴルフ会員券の書き換え手数料を取得費に含め、後者では代償金を取得費に含めませんでした。

これらを明確に説明した文献が見当たりませんでしたので私見になります。

所得税法60条の趣旨の捉え方に起因しているというより、後者では代償分割という性質を重視したことによると思います。

代償分割とは財産を相続する代わりに他の相続人に金銭などを渡す方法です。

判旨にある通り、
「相続人の一人が遺産分割協議に従い他の相続人に代償としての金銭を交付して遺産全部を自己の所有にした場合は、…右遺産を相続開始の時に単独相続したことになる…共有持分の譲渡を受けてこれを取得したことになるのではない。」

つまり、原告は相続開始時点で全ての土地を単独所有していたことになり、他の相続人からの持分の譲渡は観念できず、それに対する代償金を取得費に含めて考えることは妥当ではない、との判例の意識があると思います。

学習する際にも、当該事案における特殊性・性質に着目すると判例間の整理に繋がると思います。

以上の通り、回答をさせて頂きました。

2018年5月24日