信頼の権利につき

ご多忙中、申し訳ありません。

会社のトップが部下が職務を適切に遂行していると信頼してよいとする信頼の権利について質問です。
要は部下の職務遂行に疑ってかからなくて良いということだと理解しています。部下から問題が上がってきた場合に適切に処理しさえすれば良いということです。
問題が上がってくる前に、会社の組織の中で部下がまともにやっているかどうか疑ってかかるポジションの人はいないのでしょうか。
よろしくご回答お願いいたします。
2018年1月20日
法律系資格 - 司法試験
回答希望講師:久保田康介
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
久保田康介の回答

既にご存知でしょうけども、信頼の権利とは、各取締役が他の取締役または使用人が担当する業務について、その内容につき疑念を差し挟むべき特段の事情がない限り、適正に行われていると信用することが許され、仮に当該他の取締役または使用人が任務懈怠をしたとしても、監視義務違反の責任は負わないという原則を指します(田中亘「会社法」264頁)。

ですので、その適用範囲は取締役-使用人の縦の関係のみならず、取締役と他の取締役という横の関係にも及びます。ご質問にあるように「部下の職務遂行に疑ってかからなくて良い」というのは信頼の権利の一場面ではありますが、その場面に限定されるわけではないことにご注意ください。また、問題が上がってこなくても、疑わしい事情があれば直ちに信頼することが許されるわけではないと思います。

さて、ご質問にお答えしたいのですが、私は自分の会社以外の会社の内部を知りませんので、想像でお答えすることになります。部下がまともにやっているかどうが疑ってかかるポジションとしてひとつあげられるのが、お金の動きをみる経理部門でしょう。あやしいお金の動きがあればそれについて報告を求めたりするのだと思います。また、基本的に、上司は部下がまともにやっているかどうかチェックする役割を担っていると言えます。日々の業務連絡や進捗チェックを通じて、そうした役割を果たすのでしょう。信頼の権利は何か問題が発生した時の責任限定のための理論であって、部下の業務遂行を信頼しなければならない義務があるわけではありません。

2018年1月21日