管理処分権が「訴訟物に生じる既判力が及ぶ範囲(民訴法115条)のこと」を指しているというのも、一面においては間違いではありません。
ただし、管理処分権の意義は多義的ですので、それだけを指すという意味であれば、少なくとも現在の民事訴訟法上の考え方とは異なります。
民事訴訟法上の管理処分権の用いられ方は、主として以下の4つであることが指摘されています(堀野出「管理処分権に関する一考察」香川法学21巻3・4号(平成14年)520-521頁)。
① 担当者(第三者)が有する実体法上の権能の表現であり、実体法学ではあまり用いられないにせよ、訴訟の場面に限らず担当者たりうる者が実体的な権限を行使する場合に用いられる。
② 提訴許容の説明原理として用いられる場面であり、一般的に担当者は他人の権利関係につき管理処分権を有するがゆえに提訴が許される、とされる。
③ 判決効の正当化原理として用いられる場合であり、争われる権利関係の管理処分権を担当者が有するがゆえに、その者による訴訟追行の結果に権利主体は服することになる、と説明される。
④ 株主代表訴訟をめぐり顕在化した点であるが、和解など訴訟追行の内容に関する担当者の手続上の権能を根拠付ける際に用いられる。管理処分権のうち処分権まで有していれば、権利主体を拘束する和解も許される、とされているように見受けられる。
私も管理処分権についてよくわかっているわけではありませんが、おおよそ、訴訟(判決効の正当化を含む。)や訴訟追行に対応する実体法上の権利という程度の意味で用いています。
引用した論文についてネット上からもアクセスできますので、暇であれば一読してみてください(下記URL先の論文PDFオープンアクセスをクリックすると論文を閲覧できます。)。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000587981/
2017年4月28日