上訴の利益について

上訴の利益の有無を判断する際に、形式的不服説と新実体的不服説を並列される規範は論理的にあり得るのでしょうか
2017年4月27日
民事系 - 民事訴訟法
回答希望講師:久保田康介
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
久保田康介の回答

すでにご存じの通り、形式的不服説は、申立てと判決とを比較し、前者が後者より大きければ上訴の利益を認め、そうでなければ認めないという考え方を指します。他方、新実体的不服説は、上訴人が判決効によって別訴での救済を受けられなくなる場合に上訴の利益を認める考え方を指します。

上記の両説を並列するということは、すなわち、「申立てと判決とを比較して前者が後者より大きい場合及び上訴人が別訴での救済を受けられなくなる場合に上訴の利益を認めるべきである」という規範を立てるということでしょう。この規範自体は成り立ち得るものですので、論理的にあり得るかどうかという質問に対しては、あり得るという回答になります。

ただし、私は基本書等で形式的不服説と新実体的不服説を並列させる説を見たことがありませんし、おそらく両説は依って立つ原理が異なると思います(形式的不服説は三審制を重視し、全部勝訴し得る機会を3回与えることを主眼としているように思います。他方で、新実体的不服説は判決効により実体法上の主張が不当に妨げられてはならないという価値判断を前提としているように思います。)。それゆえ、答案においてそうした規範を書くというのは控えたほうがいいのではないかと思います。

ここまでは規範の「並列」について書きましたが、基本は形式的不服説、そしてその例外を規律する補完的なものとして新実体的不服説を位置づける見解であれば既に主張されています(高橋「重点講義(下)」第2版補訂版603頁)。たとえば、黙示の一部請求において全部勝訴した原告が残部請求のための請求の拡張をするために控訴をするような場面では、形式的不服説をそのまま適用すると控訴の利益が否定されることになります。形式的不服説は、こうした場面では例外として控訴の利益を認めますが、同説からはいかなる場合に例外を認めるかの基準が明らかではありません。なので、その際に、判決効によって別訴での救済を受けることができなくなる場合には例外的に控訴の利益を認めるべきであるとの基準のもとで、残部請求のための請求の拡張目的の控訴に控訴の利益を認めることになります。



2017年4月28日


匿名さん
「基本は形式的不服説、そしてその例外を規律する補完的なものとして新実体的不服説を位置づける見解」が生きる場面がS50民訴第2問設問(2)なのですね。その解答例(予備試験経由司法試験合格者作成)が並列的に書いてるように読めたのですが、原則形式的不服説、例外新実体的不服説というように整理する(高橋?)説があるとは知りませんでした。では、原則形式的不服説、例外新実体的不服説と整理する根拠は「形式的不服説は三審制を重視し、全部勝訴し得る機会を3回与えることを主眼とし…新実体的不服説は判決効により実体法上の主張が不当に妨げられてはならないという価値判断を前提としている」ことに起因するのでしょうか。

2017年4月28日

依って立つ原理として記載した部分は、基本書等に記載されておらず、自分はそのように理解しているという程度のものなので、気になさらないでください。

形式的不服説を基本として、新実体的不服説を補完的に用いることができる根拠は示されていませんのでよくわかりません。知りたければ論者に直接確認するほかなさそうです。

2017年4月28日