窃盗罪の占有について

新H21-17の肢を解いて疑問なのですが、この場合レンタカー会社の占有が及んでいると考えることはなぜダメなのでしょうか。他の類似事案(確か、旅館内で財物を奪った事案等)との区別がうまくいかないので、質問させていただきました。
2017年4月7日
刑事系 - 刑法
回答希望講師:宮崎貴博
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
宮崎貴博の回答

ご質問を有難うございます。以下、回答をさせて頂きます。

新H21-17の1の肢に関するご質問だと思いますので、それを前提にご説明します。

「占有」とは一般に財物に対する事実上の支配と解されています。

甲が乙社から自動車の引渡しを受けた時点で、乙社としては甲に少なくとも自動車を使わせる意思を有していますので乙から甲に占有が移ったと考えるのが素直です(処分行為)。

なお、乙社の「所有権」までがこの時点で甲に移った訳ではありません。

ですので、甲が欺罔行為をした結果、乙の処分行為によって自動車の占有が甲に移転した時に詐欺罪が既遂になります。

ご質問にある、他の類似事案(確か、旅館内で財物を奪った事案等)、例えばゴルフ場のロストボールでは、ゴルフ場の管理者はゴルフ場内のロストボールが他のプレイヤーの占有に移転することを想定していません。

当然、ロストボールはゴルフ場管理者の占有に帰属すると考えていますので管理者の占有は及んでいます。

その意思に反して占有を奪えば窃盗罪が成立することになります(処分行為なし)。

処分行為による占有の移転を認定するかが詐欺罪、窃盗罪のメルクマールになります。

参考になりましたら幸いです。


2017年4月9日