取締役会決議の瑕疵

取締役役会決議の瑕疵(最高裁昭和44年12月2日)について、質問させてください。この判例では、一部の取締役に招集通知を欠く場合について、「原則無効だが、その者が出席しても決議に影響がなかった場合には有効」と言ってます。そこで質問なのですが、この判例の射程は、取締役会決議の瑕疵一般に及ぶものですか?それとも、あくまでも判例の招集通知の瑕疵の場合に限られるものですか? 予備校答案には、この理屈を特別利害関係人たる取締役が決議に関与した場合にまで平然と使ってますが、百選解説をはじめいろいろ調べましたが、このように瑕疵一般にまで使えるとの記載を見つけられませんでしたので、質問させていただきます。
2017年3月19日
法律系資格 - 司法試験
回答希望講師:久保田康介
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ベストアンサー ファーストアンサー
久保田康介の回答

最新判例として以下のようなものがあります。

最判平成28年1月22日金判1490号20頁
「水産業協同組合法37条2項が,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事が議決に加わることはできない旨を定めているのは,理事会の議決の公正を図り,漁業協同組合の利益を保護するためであると解されるから,漁業協同組合の理事会において,議決について特別の利害関係を有する理事が議決権を行使した場合であっても,その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは,そのことをもって,議決の効力が失われるものではないというべきである。
 そうすると,漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではないと解するのが相当である(最高裁昭和50年(オ)第326号同54年2月23日第二小法廷判決・民集33巻1号125頁参照)。」

ちなみに、上記判例に引用されている最判昭和54年2月23日民集33巻1号125頁は、
「上告組合の理事会が上告組合と被上告人久保田との間において原判示の取引をすることを承認するについて、同被上告人が中小企業等協同組合法三六条の三、四二条、商法二三九条五項所定の特別利害関係人にあたることは、所論のとおりである。しかしながら、特別利害関係人たる理事は、利害関係を有する当該事項につき議決権を行使することができないだけであつて、理事会に出席して意見を述べる権限を有するのであり、また、かかる理事が加わつてされた決議も当然に無効ではなく、その理事の議決を除外してもなお決議の成立に必要な多数が存するときは、決議としての効力を認めて妨げないと解すべきである。」

と述べております。以上の判例は会社法そのものの判例ではありませんが、いずれも議決に関して会社法と同様の規定を持つ法律の解釈として会社法の解釈にも妥当するものといえます(田中亘「会社法」東京大学出版会・225-226頁参照)。


また、裁判例に以下のようなものがあります。

東京地判平成7年9月20日判時1572号131頁
「自己取引の承認決議を求める取締役は、当該議案について特別利害関係人に該当するから、決議に参加できないし(商法二六〇条ノ二第二項)、取締役会の定足数にも算入されない(同条三項)。したがって、特別利害関係人たる取締役は、当該議案に関し、議決権を行使し得ないのはもとより、取締役会の定足数に算入されないことから、取締役会への出席権もないというべきであって、結局、取締役会の構成員から除外されると解するのが相当である。
 そして、原則として、会議体の議長は当該会議体の構成員が務めるべきであるし、取締役会の議事を主宰してその進行にあたる議長の権限行使は、審議の過程全体に影響を及ぼしかねず、その態様いかんによっては、不公正な議事を導き出す可能性も否定できないのであるから、特別利害関係人として取締役会の構成員から除外される代表取締役は、当該議案に関し、議長としての権限も当然に喪失するものとみるべきである。
 しかるに、本件においては、特別利害関係人にあたる雄二が、自己取引の承認決議について議決権を行使したのみならず、取締役会の議長として当該議案の議事を主宰してその進行にあたったのであるから、本件決議は違法かつ無効なものというべきである。
 被告は、特別利害関係を有する取締役が議決権を行使した場合であっても、その者を除いてなお決議の成立に必要な多数が存するならば、決議の効力は妨げられないとして、本件決議が有効であると主張する。
 確かに、本件決議の瑕疵が特別利害関係人にあたる雄二が議決権を行使したという点のみに存するのであれば、被告主張のとおり本件決議が有効となる余地はあるが、右のとおり、本件決議については、議長としての権限を喪失した雄二が議長となって議事を主宰したという瑕疵も存するのであるから、たとえ、雄二を除いてなお決議の成立に必要な多数が存したとしても、本件決議が有効となるものではない。」

この裁判例が、最判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁を引用したというわけではありません。しかし、本件決議が(原則として)違法かつ無効であるとしつつも、「本件決議の瑕疵が特別利害関係人にあたる雄二が議決権を行使したという点のみに存するのであれば、被告主張のとおり本件決議が有効となる余地はある」として、例外的に本件決議が有効となり得ることを認めています。そして、裁判例の判示の内容をみると、本件決議の瑕疵が決議の効力に影響を与えるかを検討していると読むことができます。したがって、この裁判例は、最判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁のルールが、特別利害関係人たる取締役が決議に関与した場合にも妥当すると考えているといってよいと思います。


さまざまな基本書等において、最判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁は決議の瑕疵に関する判例として位置づけられておりますので、研究者一般も取締役会決議の瑕疵一般に妥当すると考えていることが推測できます。直接的には読み取りにくいですが、目次やタイトルのどの部分に位置づけられているかのチェックも重要なので、今後の参考にしていただければと思います。

2017年3月20日