不法行為により生じる損害については不法行為時に全損害が発生していると考えるのが判例・通説であったと記憶しておりますが、そうしますと、後遺障害部分を含む損害が不法行為時に発生していることになります。
たとえば、XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟で、裁判所が「被告は、原告に対し、100万円を支払え」との判決を言い渡したとします。この場合、(実際にできるかどうかはさておき)後遺障害部分の損害を含めて損害が100万円であると判断したことになります。こうした理解の下、後遺障害は基準時前の事由だと理解しています。
おそらく疑問点は、確定判決後に後遺障害が発症したのに基準時前の事由と考えるのはおかしいのではないかという点にあるのではないかと推察します。この点については、たとえば交通事故により後遺障害の「原因」が既に形成されていて、訴訟当時はそれに気付いておらず、判決確定後にそれに気付いただけだと理解しているようです(高橋重点講義【上】634頁)。
発症に着目するか、それとも原因形成に着目するかは、後遺障害というものをどう捉えるかにかかってくると思います。一度ご自身で考えていただければと思います。
2017年2月28日