後遺障害が基準事後の新事由とならない理由

表題の件につきまして

XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を認容する判決が確定したとします。

その後に、同一の不法行為を原因とする後遺障害に基づく損害賠償請求を提起する場合、後遺障害が基準事後の新事由とならないのはなぜでしょうか。
未設定さん
2017年2月28日
法律系資格 - 司法試験
回答希望講師:久保田康介
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ベストアンサー ファーストアンサー
久保田康介の回答

不法行為により生じる損害については不法行為時に全損害が発生していると考えるのが判例・通説であったと記憶しておりますが、そうしますと、後遺障害部分を含む損害が不法行為時に発生していることになります。

たとえば、XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟で、裁判所が「被告は、原告に対し、100万円を支払え」との判決を言い渡したとします。この場合、(実際にできるかどうかはさておき)後遺障害部分の損害を含めて損害が100万円であると判断したことになります。こうした理解の下、後遺障害は基準時前の事由だと理解しています。

おそらく疑問点は、確定判決後に後遺障害が発症したのに基準時前の事由と考えるのはおかしいのではないかという点にあるのではないかと推察します。この点については、たとえば交通事故により後遺障害の「原因」が既に形成されていて、訴訟当時はそれに気付いておらず、判決確定後にそれに気付いただけだと理解しているようです(高橋重点講義【上】634頁)。

発症に着目するか、それとも原因形成に着目するかは、後遺障害というものをどう捉えるかにかかってくると思います。一度ご自身で考えていただければと思います。

2017年2月28日


未設定さん
的確なご回答とご指摘ありがとうございます。

もう一つ質問させていただきたいのですが、
これは結局、既判力の遮断効の問題なのでしょうか。

2017年2月28日

後遺障害が何の問題であるかを単一的にみることは難しいです。不法行為を原因とする損害発生時点、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の訴訟物、一部請求後の残部請求の可否と基準、既判力の遮断効など複数の問題が絡み合っています。

ただし、問題意識としては、後遺障害により生じた損害の賠償請求が前訴の既判力により妨げられるのは不都合であるという点にあり、これは共通しています。その意味では既判力の遮断効が問題の出発点で、研究者により遮断効が後訴に及ばない法律構成がいくつも提案されたので、ではどの法律構成が問題の少ない優れた法律構成かを検討しているというのが現在の議論状況だと思います。

2017年3月1日


未設定さん
ご回答していただきありがとうございました。

久保田先生の講義はどれもクオリティが高く、本当に勉強になります。

司法試験本番まで残り数か月となりましたが、向上心をもってまだまだがんばろうと思います。

ありがとうございました。

2017年3月1日