短答を論文のように解くとは

直前期の短答対策として論文の勉強も兼ねるように
短答を論文のように解く、という情報を耳にします。
これは、各肢ごとに要件充足性を検討していくということでしょうか。
短答対策と論文対策が同時に出来るこの方法にとても魅力を感じるのですが、いまいちどうやって進めればいいかわかりません。
ご教授いただけると幸いです。
2016年4月3日
その他 - その他
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
久保田康介の回答

短答を論文のように解くと言われても、実際やってみようとするとうまくいかないことがありますよね。

実際にここでやってみます。
H27司法試験短答式試験問題・民法・第2問の1つ目の肢です。

<事案>
Aは,その所有する甲土地についてBと仮装の売買契約を締結し,その旨の所有権移転登記をした。その後,Bがこの事情を知らないCに甲土地を売却した場合,BからCへの所有権移転登記がされていないときでも,Aは,Cに対し,AB間の売買契約の無効を主張することができない。
<解答>
AはCに対して、AB間の売買契約の無効を主張することができるか。
本件では、AB間で甲土地の売買契約(555条)が締結されている。しかし、同契約は仮装のものであるから、同契約は虚偽表示であり、無効である(94条1項)。同契約は無効である以上、Cに対しても無効を主張できるのが原則である。
もっとも、Cは善意の第三者に該当し、AはCに対して上記無効を対抗できないのではないか(94条2項)。
本件では、AB間の通謀の事実を知らずに甲土地の取引に入ったCが「善意の第三者」であることにさして問題はない。問題となるのは、第三者に該当するために、さらに登記の具備を要するか否かである。
94条2項は、通謀により虚偽の外観を作出した帰責性のある真の権利者よりも、その外観を信頼して取引に入った第三者を保護するための規定である。そうであれば、第三者保護の要件としては、外観を信頼したことのみで足りるのであり、登記の具備までをも必要とする理由はない。また、94条2項は「善意の第三者」とのみ規定し、登記の具備を要求していない。以上より、登記を具備せずとも、94条2項の第三者に該当するものと考える。
本件では、Cは登記を具備していないが、それにより第三者該当性の判断に影響することはない。したがって、上述の通り、Cは善意の第三者に該当することから、AはCにAB間の売買契約の無効を対抗することはできない。



即興で作ったので、表現等を詰める余地は多分にあると思いますが、こんな感じです。

必要なことは、①原則論を確認した上で例外に踏み込むこと、②一番問題となるのはどの部分であるかを意識した論述をすることです。この点で、上記解答は、①94条1項の原則+無効の場合の原則を確認した上で、94条2項の例外に踏み込んでいること、②一番問題となる第三者の登記の要否に文字数をあてて、善意該当性や第三者該当性はあっさりと触れているので、確認してください。

注意すべき点は2つです。第1に、短答を論文のように解くとは言っても、その程度には個人差があります。上記解答のように、答案を作るまでする人も中にはいると思いますが、答案構成までで終わらせる人のほうが多いと思います。第2に、論文のように解けない問題があります。たとえば、H27民法の第1問目は、当該行為が法律行為か否かを問うだけの問題です。この問題を論文のように解くといっても、法律行為の意義と該当性の判断のみで終わってしまいます。このように、概念にあてはまるかどうかを問うだけの問題、また、条文・判例に該当するかどうかだけを問う問題には、論文のように解くのが難しい(というか論文のように解くだけの物量を備えていない)問題があります。

以上です。

2016年4月6日