独禁法19条は「不公正な取引方法」を禁止しています。この趣旨は、市場に悪影響を与えるような行為・手段を防ぐことにあります。
この「不公正な取引方法」に該当するか否かという判断が重要になります。
たとえば、すでに知名度を得ているある高価化粧品メーカーAがブランドイメージを守るために、安売りを止めさせたいとします。安売りされると、「高価化粧品」というブランドイメージが崩れてしまいますからね。
その手段としては、一定の小売価格を設定して、それを下回る価格で販売している業者・小売店への出荷は行わないような方法を採る場合が考えられます。そのような場合が「不公正な取引方法」の一例になりえます。価格操作を許すことで、市場に悪影響を与える危険性があるというわけです。
では、たとえば上記の手段を新参メーカーBが採用したらどうなるでしょうか。
Bとしては、「高価な化粧品メーカー(ハイブランドメーカー)」のブランドイメージを構築・確立したいのですが、初めから安売りされてしまうと、「廉価商品のメーカー」というイメージをもたれてしまう可能性があります。
これを防ぐために上記のような手段を用いることは、むしろブランドイメージの構築・確立につながり、既存のハイブランドメーカーとの競争を促進し、市場に良い影響を与えるものと考えるわけです。
そのため、この場合には「不公正な取引方法」にはあたらないと考えることが可能になるのです。
上記のような例で「不公正な取引方法」に該当するか否かの分水嶺の1つは、当該メーカーがすでに知名度がある既存メーカーなのか、それともまだ知名度がない新参メーカーなのかという点になります。
このように、独禁法の適用を判断するためには、現実の事業活動・企業活動のイメージを沸かせることが重要になるのです。
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2016年9月28日 酒本隆弘
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