2023年度 中央大学法科大学院 入学者選抜 合格者の概要 及び 2024年度 受験に向けて

2023年度 中央大学法科大学院 
入学者選抜 合格者の概要
 及び
2024年度 受験に向けて

| 目次

1.中央大学法科大学院 合格者数情報の公開について
2.昨年度入試との相違点(ライバル校の動向を含む)
  (1)今年度入試の合格者(入学者)は、駿河台キャンパス(新築)にて受講することとなる
  (2)未修者コースにおける法曹ポテンシャル入試の実施
  (3)入学辞退率を左右することとなるライバル校(早稲田大学法科大学院)における、学費免除制度の廃止ないしその枠の大幅縮小(一般入試・他大学学部出身者)
3.受験生相対の合格ラインおよび免除対象者の分析(既修)
  (0)開示スコアの表記について
  (1)学費免除なしの合格ボーダーラインについて
    ア.ボーダーラインについて
    イ.書類点について
  (2)免除内定者と普通合格との比較について(成績開示者のみ対象)
    ア.免除有無を分けた要素について
    イ.免除の人数について(特に全額免除)
4.未修者入試について
  (1)筆記試験の合格点について
  (2)未修ポテンシャル入試の筆頭試験について
    ア.出題内容について
    イ.総評および2024年度入試に向けて

1.中央大学法科大学院 合格者数情報の公開について 

 同大学の情報公開は他の法科大学院と比べて非常に遅く、しかも例年国の機関(文部科学省)による情報公開に後れて、詳細が公開されます(毎年8月~実施される入試の情報公開は、翌年5月頃に公開される傾向にあります)。そのため、本記事作成時点(2023年2月初旬)では、未だに情報公開がなされていない状況です。
 もっとも、一般入試を課さない法曹コース受験を除く「一般入試」における既修者コースの受験者数は、試験当日の掲示板記載より、736名の出願者数であったことまで把握しております。

 繰り返しとなりますが、法曹コースと一般入試を合計した出願者数などの詳細については、入学者選抜より10か月以上経過した2024年4~5月頃に公表されるかと思われますので、法科大学院側が公開するまで今しばらくお待ちください。
 なお、大学側の公表者数については、例年一般入試の出願者数・受験者数だけでなく、入試選抜が行われない法曹コースの出願者数等を加えた数となっていることに留意が必要です。(今年度、仮に同大学の表記が別個独立して公表された場合については、上記記載を修正いたします)。

 また未修者コースについては、今年度より秋季募集(法曹ポテンシャル入試)がなされたことにより、出願者数・受験者数自体は昨年度と比較し、増加することが窺われます。そのため、2022年度と比べ2023年度入試では入試者選抜制度が追加された点をご理解の上、前年度入試と比較した戴きますようお願いします。

2.昨年度入試との相違点(ライバル校の動向を含む) 

(1)今年度入試の合格者(入学者)は、駿河台キャンパス(新築)にて受講することとなる

  同ロースクールは、2023年度まで市ヶ谷(曙橋)の防衛省付近にある、JETROアジア経済研究所の旧経済協力センタービル庁舎(1963年完成)をリノベーションしたうえで長年使用していました。しかし、同建物の老朽化や、お茶の水にある旧中央大学駿河台記念館の建替えを契機に、同地へキャンパスを移転することとなりました。
 2023年4月入学者は、入学初年度より同キャンパスを利用することとなります。
<参考>
・旧校舎所在地:東京都新宿区市谷本村町42番8号
・新校舎移転地:東京都千代田区神田駿河台三丁目11番地5号

(2)未修者コースにおける法曹ポテンシャル入試の実施

 未修者コースについては、従来、書類選考(年によっては面接も実施)のみによる冬季入試が行われていました(なお2022年度入試では既に廃止)。しかし今年度2023年度入試より、選抜方法は若干異なるものの、実質的に冬季入試が復活する形となりました。
 ただし、選抜方法については従来と若干異なります。すなわち、従来の書類選考に加え、筆答試験(一般知識、小論文)による選抜がなされます。
 この筆頭試験は、23年度入試より開始されました。他方、24年度に中央大学法科大学院入試受験を検討する方にとって、どのような問題が出るかは関心事項であると思います。そこで、「⒋⑵未修ポテンシャル入試における筆頭試験について」項目どのような問題が出たか、著作権法上の問題に抵触しない範囲で案内しておりますのでご覧ください。

(3)入学辞退率を左右することとなるライバル校(早稲田大学法科大学院)における、学費免除制度の廃止ないしその枠の大幅縮小(一般入試・他大学学部出身者)

 同大学では2022年度入試迄、一般入試合格者に対し実質的な学費全額免除ないし半額免除制度が設けられていた(稲門法曹奨学金)。しかし、2023年度入試において一般入試合格者はその対象から外され、法曹コース(内部)および開放型による合格者のみを対象とすることとなった(対象者合計:60名)。
 また、池田正範・千賀修一奨学金については、2023年3月に早稲田大学法学部を卒業する者のみを対象とする制度であることから、他大学出身者にとっての入学者選抜における学費免除の途は法務研究科学生支援奨学金(採用人数:3名)しか残されていないこととなっています。
 他方で、中央大学法科大学院では、2023年度入試時点において、出身大学や所属コースを問わず受験生に対し広く奨学金制度を設けています。具体的には第一種特別奨学金給付金(学費全額免除)、第二種特別奨学金給付金(学費半額免除)といった制度です。これらは制度上、未修者・既修者入学者ともに対象となります。
 上記ライバル校の入試制度の変化は、中央大学法科大学院の今後の入試にも影響を与えることとなるでしょう。

3.受験生相対の合格ラインおよび免除対象者の分析(既修) 

 23年度入試では、合否を問わず、法科大学院入学者選抜試験における筆記試験の成績開示を大学院側に請求できるようになりました。
 もっとも、上記開示制度は今年度から開始された制度であること、請求期間は1週間程度であり、また請求しない限り成績は開示されないことから、ほとんどの受験生は自らの入試成績を把握することが出来ていないようです(合格者に対するヒアリングに基づく)。
 その中でも成績の開示をし、かつ情報を提供下さった受験生のデータを基に分析した結果、以下の事実が判明したため、案内いたします。

(0)開示スコアの表記について

 開示されるスコアの表記は、受験生の最高得点から最低得点の間を5等分し、その得点の最上位をAと表記し、以降B、C,D,Eの順に得点域を表記したものであり、順位ではないとのことです。
 ここで「順位ではない」という表記に注意が必要です。いわゆる大学の学業成績(GPA)のようにAの割合が〇%と定められていないので、最高点によってはAの人数割合が少なく、逆にBの人数割合が多いということは十分にあり得るということです。
 また実際に開示された点数によると、予備試験や東京一橋ローに合格した方でも全科目Aという方はいないことからすると、各ランク人数按分して20%ごとというわけではないことが窺われます。

 また次項より詳細を案内するボーダーラインにおける必要評価と、中央大学の倍率(2.5倍程度)からすると、

(1)学費免除なしの合格ボーダーラインについて

 中央大学法科大学院入学者選抜における試験科目は、6科目(憲法/民法/刑法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法)であり、上三法が各120点、下三法が各80点で構成されています。(なお、ランク分類については⒊(0)開示スコア表記項目にて説明した通りです。)

 結論から述べると、既修者試験において学業成績やステートメント等書類点については免除の有無で特に効力を発揮するのであり、合否については特に筆記試験の出来具合が左右することが窺われる結果となりました。そのため、受験生が既修者コースで合格するためには、まず法律科目の筆記試験で最低ラインをクリアしていることが必要となります。

ア.ボーダーラインについて
 前提として、中央大学法科大学院の入学者選抜における出願者数・受験者数については、同大学学部や法曹連携協定関係校(中央を除く9校)の法曹コース利用の受験者数も含まれた数字であることに注意が必要だということは、項目⒈で述べた通りです。
 そのうえで、彼らを除いた2023年度一般入試の出願者数は736名(当日の受験番号表一覧に基づく)となっています。

 昨年度のデータからすると、近年は同大学学部や法曹連携協定関係校(中央を除く9校)法曹コース在籍者の受験者数は少なくとも100名以上(200名程度)おり、かつ彼らも一般入試に出願できることからすると、同年度の一般入試における実質倍率は2.2~2.8倍程度であったと推測します。

  同競争倍率を前提とすると、理論値としては六法合計でB2科目程度(上位40%以内程度)+C4科目程度(上位60%以内程度)で概ねボーダーライン前後に達することとなります。
 実際に、概ねそれを示すかのような結果がでています(上記図表を参照願います)。たとえばBさんとCさんは上記理論値とほぼ同程度の水準で合格しています。

 なお、Cの中でも上位と下位では20%近い振れ幅があることから、すべての受験生がB2科目かつC4科目で合格するという訳ではないことをご理解願います。事実CさんはB2科目、C3科目、D1科目で合格していることからも、わかるとおりです(=5評価分類のみで平均すると上記理論値に届かない)

イ.書類点について
 結論から述べますと、免除の有無に書類点(ステートメントや資格・経歴)やGPAが大きく影響するといえます。事実、同程度の筆記成績の方でも、結果は全額免除と普通合格に分かれました

 他方で、ボーダーライン前後であればともかく、同ラインに位置しない人が筆記試験の点数が振るわない場合に挽回できるかというと、それは否定されそうです。
 次項で案内するとおり、書類点(特に高GPA・公認会計士などの難関資格合格)は特に学費免除資格の付与の場面で威力を発揮するといえそうです。

(2)免除内定者と普通合格との比較について(成績開示者のみ対象)

ア.免除有無を分けた要素について

 上記表では、合格者の中から4名の者を抜粋し、記載しております。
お分かりのとおり、上記4名の方は筆記試験の成績に大差がないように思えますが、反面で学費免除結果については全学免除~免除なしと様々です。
 これについては、あくまで筆者の予想に過ぎませんが、恐らく学費免除を左右するための要素として「書類点」が挙げられると思います。
⑦さんと⑫さんは、法学部においても非常に優秀な成績を修め、かつ学内で表彰歴もあるような方です。そのような方については、その実績を示した書類を提出すれば高評価となりうるということでしょう。

 もっとも、本稿には記載出来ませんでしたが、学部成績優秀者や学内表彰歴のある方でも不合格となっている事実からすると、あくまでも既修者入試において書類(成績・資格・ステートメント等)は合格最低ラインを突破したものが免除を受けられるか否かを分ける重要な要素となるものであり、合否だけで見るなら書類は大きく影響しないことが推測されます。

 なお、丁さんについては、資格など書類の提出はありませんでした。
以上のことから、中央大学法科大学院で学費免除を受けたいと思っている一般入試受験生については、筆記試験の合格ラインを突破した後は書類点が非常に重要な要素となることを理解したうえで、出願書類の作成や日頃の勉強に努めて戴きたいと思います。

イ.免除の人数について(特に全額免除)
 上記のとおり、成績を開示し、かつ筆者あてに開示資料を添えて報告をした学費全額免除対象者は13名いらっしゃいました。それ以外に、開示はしなかったが学費免除を得たという方は、1種内定通知書の画像を提出した方で6名、中央大学学部のいわゆる炎の塔(司法試験受験団体)だけで少なくとも15名以上おり、かつ法曹コースの全額免除を含むと総勢50名近くに上るという調査結果もあります。

 だからといって、中央大学法科大学院のパンフレットに案内されている「採用予定者上限:20名」というのが偽りというものではありません。あくまでも上記内定者人数は採用予定者に過ぎないこと、かつ中央大学法科大学院の2022年度入試における入学辞退率が約7割だった事実からすると、(上記内定者の7割程度が辞退するという試算であれば)最終的に入学する全額免除者数は20名という範囲内に収まります。

 上記の事実及び推論より、2024年度の受験生については、受験生の実力や書類点次第で学費全額免除を得る可能性は十二分にあるから、学費負担なく法科大学院に入学したいと思う受験生はぜひ日頃から勉強し、同法科大学院を受験して頂きたいと切に願っています。

4.未修者入試について 

(1)筆記試験の合格点について

 未修者入試の合格者(うち開示を受け、筆者あてに連絡のあった者)は、筆記試験においてB評価以上を得る方々でした。

(2)未修ポテンシャル入試の筆頭試験について

ア.出題内容について
 まず、筆頭試験は、①一般知識(配点50点)と、②小論文(100点)に分かれています。このうち①については、高校で学ぶ政治経済の教科書のような文章を受験生に読ませ、空欄に入る適切な語句を埋めるというものです(後に確認したところ、『改訂版政治経済』(数研出版)がネタ本であった模様です)。
 難易度としては、中学校の公民の授業で学ぶような内容を知っていれば政治分野については十分に合格点を取れる問題でした。

 他方で経済分野、具体的には市場メカニズム(例として、需要供給曲線の仕組み及びその分析)について問う問題については、旧センター入試等で政治経済を選択していた方が圧倒的に優位であったかと思います。
 なお出題された具体的内容・文章については、著作権法上の問題もあり転載はできかねます。そのため、詳細については中央大学法科大学院が試験問題を公開するまでお待ちくださいますようお願い申し上げます。

 以下は、あくまでも著作権に抵触しない範囲で、出題分野について案内します。
 ①一般知識のうち政治分野の出題については、未修者が入学した初回の憲法の授業で学ぶような内容で、「法の支配」の原理や「近代立憲主義」について問う問題でした。ロックやルソー、『市民政府二論』、『権利章典』、絶対王政という言葉は、中学受験や中学の公民でも習う内容であり、馴染み深い用語かと思われます。そのため、受験生の間ではそこまで差がつかなかったと思われます。

 それに対し、経済分野の出題については、需要供給曲線の説明は一応されているものの、政治経済選択者とそれ以外では得点率に差があったように思えます(需要過多の場合に市場価格はどうなるか等、暗記はせずともその原理を一応の水準に理解していれば得点可能な問題ではありました)。
 この受験生の読解力を問うのと異なる出題は、果たして法科大学院入学に適切な人材を選抜するという趣旨とどう関係するのか、法科大学院の講義(特に必修科目)とどう関連するのか、通常の入試と比較し経済の問題を出題することでどうして「法曹ポテンシャル」を測ることができるのか、個人的にはその出題意図に若干の疑問を抱いております。

 ②小論文(100点)については政治分野、具体的には統治分野(直接民主制や間接民主制の意見を基に、「首相公選論」について意見を問うもの)から出題されました。これについても、大学で政治学科に在籍する方や、高校の授業や大学入試の対策として『政治経済』『現代社会』を学んだ方にとっては非常に有利な内容でした。ただし、この知識は基本知識であり、入学してからも非常に有益ですので、個人的には(受験生の入学後を考えると)哲学等の文章を読ませる通常の未修者入試と比べ、非常に良い問題であったかのように思えます。このような問題が出るとなると、受験生としても対策がしやすく、勉強の成果が発揮できるようにも思えます。

 もっとも、法学部以外の学部出身者(例えば文学部)については、筆記試験で不利なことが予想されることから、最終的に書類点を含む総合点で合否を決めるべきということは言うまでもありません。

イ.総評および2024年度入試に向けて
 法曹ポテンシャル入試の筆記試験の総評としては、通常の未修者入試の筆記試験と比べ、法学や政治学を専攻していた受験生や、高校・大学において『政治経済』『現代社会』を学んだ方が圧倒的に優位な試験ではあったというのが、講師の個人的な感想となります。そのため、来年度以降については、出題傾向が見直されることも十分に考えられるでしょう。

 ただし、今年の政治分野の出題内容については、法科大学院入学後の憲法を学ぶ上でも非常に重要な知識となります。そのため、来年度以降もこの出題傾向が踏襲されてもおかしくはないといえるでしょう。
 受験生のなかで、もしも司法試験短答式試験の問題を解きつつ、上記政治分野の出題内容を効率的に勉強したいという方がいらっしゃるのであれば、以下勉強に有益な設問を記載しておきますので、ぜひ解いてみてください(なお法学検定の問題集〔ベーシック初級・スタンダード中級〕にも有益な問題がありますので、気になる方は各自でご覧ください)。

【司法試験・予備試験短答式(公法系憲法)試験問題】
司法試験平成19年度設問1、司法試験平成20年度設問1、司法試験平成23年度設問13、司法試験平成26年度設問1、司法試験平成27年度設問11、
予備試験平成29年度設問7、予備試験令和3年度設問7


以上

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2023年2月26日   藤澤たてひと 

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