私は、大学院修了後、化学メーカーの研究職として5年間勤務していました。しかし、研究を進める中で、研究成果を権利として保護し活用する意識の重要性に気づき、知的財産の専門家である弁理士を目指すことにしました。働きながらTACの弁理士講座を利用し、平日は毎日2時間程度、土日も可能な限り学習時間を確保しました。多忙な研究職の業務と並行しての学習は大変でした。1回目の弁理士試験では、短答式試験を突破したものの論文式試験で合格基準点に2点足らずに不合格、2回目の試験では、設問外の内容に触れてしまったことが響き、合格基準点は満たしたものの不合格となりました。それらの反省を活かした3回目の試験で、ついに合格を掴むことができました。
その後、法律事務所へ転職し弁理士として働く中で、「研究成果を保護し活用する」ためには法廷に立つ必要があると感じ、法曹資格の取得を決意しました。もともと、親族(父と兄)が弁護士であるため、弁護士という職業が身近な環境だったことも大きな要因でした。法科大学院入試の対策は、受験日の約1ヶ月前から開始し、受験校(東京大学、未修)の過去問3~4年分を解き、未修コースの論文試験のネタ集めとして関連書籍を読むことに絞って対策を進めました。弁理士資格と研究職の経験が法曹資格と結びつくことの強みを職場に評価していただき、働きながらロースクールに進学する許可が出たため、東京大学ロースクールの未修コースに入学することになりました。
まず、ここで私の目の前に広がったのは圧倒的な情報量の壁でした。
「学部において4年間かけて学ぶ内容が1年間に凝縮されている」
東大ロースクール未修コースの授業は非常に難しく、学部において4年間かけて学ぶ内容が1年間のカリキュラムに凝縮されているため、授業を聞いてもほとんど何も分からない状況で始まりました。特に、民法や刑法といったいわゆる上3法に比べ、いわゆる下4法の学習は大変でした。毎日の授業の予習、復習、および授業への参加に1日の全可処分時間を費やしても学習が追いつかない日々が続きました。研究職と弁理士試験で培った学習経験があっても、法律の世界は全く別物でした。
さらに追い打ちをかけたのが、ロースクール特有の学習スタイルでした。課外での論文の指導では「学説の対立に触れた上で、自説のメリットと他説への反論を記述すること」が推奨されましたが、これが司法試験本番では致命的な欠点となりました。論述時間が不足し、肝心の結論を書き切れない――。この矛盾に、私は大変苦しめられました。
この時期、大手予備校の基礎講座を受講しましたが、ロースクールの授業が忙し過ぎたため、憲法の講義の一部を聞いただけで、結局最後まで見ることができず、視聴期限が過ぎてしまいました。ただ、憲法の講義は分かり易かったという印象があります。ロースクールの授業と予備校の教材、それぞれに良さがあると感じました。
在学中受験制度を利用した1回目の司法試験は、過去問演習などの司法試験対策不足や基本書通読などの勉強不足が響いて不合格でした。
憲法では、問題文の内容に共感できることから「得意」と感じていたにもかかわらず、最後まで成績は中途半端なままでした。当然ながら、「問題文への共感と答案としての高得点は別物」だったのです。
他の科目についても同様に問題を抱えており、刑法は書き方のパターンが決まっている科目ですが、当時の私は書き方が分かっていませんでした。行政法は問題文の分量が多く、読む速度も書く速度も速くない私には解答時間が足りませんでした。各訴訟法については明らかに知識不足でした。
しかし、全科目を通して最も深刻だったのは、「自分の答案の何が悪いのか、自分では分からない」ということでした。答案練習会(答練)や模試における私の答案に対する添削者のコメントが言わんとしていることを、自分では分かったつもりになっているだけで、全く分かっていませんでした。
転機となったのは、先輩弁護士による継続的な添削指導でした。先輩弁護士は、私の答案を見た後、対話形式で答案のどこが悪かったのか、何を理解できていなかったのか、詳細な説明をしてくれました。
「この書き方では解答者の意図が伝わらない」
「法的三段論法から外れている」
「この部分は時間配分が間違っている」――。
自分では気づけなかった課題が、明らかになっていきました。
特に重要だったのが、配点表に基づいた時間配分の指導でした。「配点の高い結論部分に時間を残すように意識すること」との教えで、憲法の答案構成が劇的に変わりました。
それまでの私は、原則として、憲法答案を「問題提起(権利設定)→当該権利が保障されるか(憲法上の保障範囲)→当該権利を侵害しているといえるか(侵害該当性)→侵害が正当化できるか(審査基準設定)→本件における憲法判断(当て嵌め)→結論」という流れで書いていましたが、各要素にかける時間を管理できておらず、例えば「憲法上の保障範囲」に丸1頁を費やしているのに、「当て嵌め」は数行で終わるといったバランスを失った答案を作ってしまうことがありました。私もバランスが悪いことは認識していましたが、具体的にどのように修正すれば良いか分からず、なかなか改善できませんでした。また、規範(暗記すべき基本内容)のインプットも不完全で、かつ答案構成にも多くの時間を使っていたこともあり、何の改善から手を付けて良いものか頭を抱える状況でした。
このような状況の中で、配点表に基づいた時間配分の指導を受けました。答案は、ある程度流動的ではあるものの、予め決められた配点の中で採点されるものであり、どんなに丁寧に記述しても配点の上限を超えた得点をとることはできません。そして、例えば「問題提起」に配点が何十点も振られることはあり得ず、採点する必要性から、どこに何割の配点が振られるかは凡そ決まっています。その配点割合がそのまま答案のボリュームの目安であり、そこから外れての過剰な記載は、答案全体として見ればかえってマイナスです。本試験における配点割合(配点表)は公表されていませんが、各司法試験予備校の実施する模試や答練では、長年に渡る司法試験分析の蓄積・経験に基づいた配点表が作成されており、本試験における配点表もほとんど同じだと考えて良いと思います。
答案は自分の知っていることを見せびらかす場所ではなく、問題設定をした上でその問題に対する自分なりの結論と結論に至る思考過程を分かり易く説明する場所です。それまでの私は、知識不足を隠そうとして逆に過剰な記載を重ねており、結果として答案のバランスを失っていました。しかし、配点表に従って記載する練習をしたことで、過剰な記載を減らすことができ、その結果、曖昧な知識を思い出しながら書く必要が無くなり、答案構成の時間も減らすことができ、かつ、筆力(単位時間当たりの記載可能文字数)も上げることができました。
刑法では、優秀答案を参考にしながら先輩の指導を受け、書き方を根本から修正しました。
司法試験合格後の司法修習における検察起案でも指導されますが、刑法は「客観→主観」の順番で記載し、また、「構成要件該当性→違法性阻却事由→責任阻却事由」の順番で記載することが求められます。
私もロースクールの授業でこの点は指導を受けており、知識としては持っていましたが、実際に答案を作成するに当たっては、どのように書けば良いのかイメージが固まっていませんでした。しかし、刑法は書く順番が決まっているが故に優秀答案の書き方が似ているものが多く、優秀答案を数多く読むことで、「評価される書き方」が分かってきます。そして、自分の書き方が決まると、書き方で迷うことが無くなり、問題文に挙げられている事実を拾って法的に評価するという作業に集中することができます。問題提起から結論まで、どの順番で、どんな書き方をするか、先輩の指導を受けながら何度も練習したことで、短期間で一気に成績が伸びました。
行政法では、マーカーの引き方を工夫し、読むべき場所と流し読みで良い場所を見極める練習を重ねました。
行政法は、問題文が三部構成になっていることが多く、問題文の分量が非常に多いです。この問題文を全てしっかり読んでしまうと、解答時間が足りなくなります。そのため、問題文のどこが重要で、どこは流し読みや後回しでも良いのかを見極める必要があります。また、何度も読み直す時間はありませんので、一度読んだ時点で、問題文のどの事情を答案のどこで使うのか決める必要があります。
私は文章を読む速度も、筆記の速度も遅いため、行政法はいつも解答時間不足でした。しかし、行政法は問題文の誘導がしっかりしているため、慣れてくると何を書くべきかがはっきりしてきます。もっとも、問題文の分量が多いため、問題文の誘導に従った答案構成のどこで、どの事情を使うか、最初に問題文を読んだ時点である程度決めておかなければいけません。そこで、問題文の読み方から工夫し、「直接質問文(何が問われているか)」を確認し、解答すべき内容を把握して、答案の方向性の当たりを付けてから問題文を読み始め、肯定側の事情・否定側の事情ごとに別のマーカーで色を付けながら問題文を読み進めました。また、参考条文も、どこで、第何条を使うかを考えながら、使用する条文にマーキングしました。最後まで解答時間不足は解決しませんでしたが、似た分野からの出題も多く、練習(過去問演習・答練など)の効果を感じられました。
また、BEXAの条文マーキング講義も活用しました。条文を読むと眠くなってしまう私にとって、重要な条文の解説を交えつつ短時間で読み上げてくれるこの講義は、3~4ヶ月間の学習で効果を発揮しました。
司法試験は法律(法学)の試験である以上、実体法(条文)と判例・裁判例の知識・理解は必須です。しかし、条文は抽象化されており、理解が困難で、読んでいると眠くなります。「眠くなるけど、やらないわけにはいかない」として条文素読を行うわけですが、頭に入りませんし、時間もかかるため、非常に効率が悪いものです。そんな中、条文マーキング講義は、条文の重要性ごとに解説の密度を変えながら、テンポ良く条文を読み上げてくれるため、効率的に条文知識を整理できます。条文知識は必須なので、私のように、条文素読をすると眠くなってしまう方にお勧めです。
弁理士試験でも3回目の受験で合格した経験を持つ私は、学習においてフィードバックを得る機会の重要性を既に痛感していました。論文作成についていえば、理系バックグラウンドゆえに、技術論文作成には慣れていました。法律論文は書き方が決まっているため、論文を書くこと自体は技術論文よりも簡単だと感じた面もありましたが、やはり他者からの添削で得る視点は自学自習で習得することは困難でした。
弁理士試験受験生時代、答練の添削済答案を予備校の先生の下に持参し、添削者の指摘事項について質問できたこと、また先生に私が作成した答案を見ていただき、口頭で詳細な説明を受けることで、自分の意図が伝わらなかった部分やその意味を理解できたことは、大きな財産でした。
その経験をいかして、ロースクール在学中、私は平日を学校の予習・復習と授業に充て、土日は法律事務所での仕事と先輩弁護士からの答案添削を受けることに充てていました。特にロースクールの3年生となってからは、在学中受験を見据えて過去問を解き始めました。実務家登用試験である司法試験の対策において、先輩弁護士という実務家の視点からの添削は、合格に向けて大きなアドバンテージだったと思います。
そのような環境の中、2回目の受験で司法試験に合格することができました。
正しい学習方法を継続し、十分ではないかも知れませんが勉強時間を確保できたこと。
文章での添削だけでなく、先輩弁護士から口頭での説明も受けることで、添削内容の趣旨を正確に理解できたこと。
この「第三者の目」があったからこそ合格に辿り着けたと実感しています。
最後に、これから予備・司法試験を目指す方へ、私が特に大切だと感じたことをお伝えしたいと思います。優秀な先生方から直接話を聞ける機会はとても貴重であり、理解を深める大きなチャンスでもあります。恥ずかしがらず、貪欲に分からないところは分かるまで聞く姿勢を大切にしてほしいです。
また、一人で抱え込まず第三者のフィードバックを求めることが大切だと実感しています。初めは勇気が必要かもしれませんが、自分自身では気づけない答案の欠点を先輩など身近な人にアドバイスしてもらう。そうすることで自分の不足部分が見えてくるはずです。
また、本試験では全力を出せるように、事前の準備から気をつけていただきたいと思います。当日実力を全て発揮できるようにピークを持ってくることを意識していただければと思います。
| 区分 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 憲法 | 『短答式試験過去問題演習トレーニング』 | TKC司法試験対策講座(TKC演習システム) |
| 民法 | 『短答式試験過去問題演習トレーニング』 | TKC司法試験対策講座(TKC演習システム) |
| 民法 | 『民法条文マーキング講義 極』 | BEXA |
| 刑法 | 『短答式試験過去問題演習トレーニング』 | TKC司法試験対策講座(TKC演習システム) |
| 区分 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 前提教材 | 『 趣旨・規範ハンドブック』 | 辰已法律研究所 |
| 前提教材 | 『論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本』 | 辰已法律研究所 |
| 前提教材 | 『論文過去問マスター答練』 | 伊藤塾 |
| 科目 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 憲法 | 『 趣旨・規範ハンドブック』 | 辰已法律研究所 |
| 憲法 | 『論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本』 | 辰已法律研究所 |
| 憲法 | 『 論文過去問マスター答練 』 | 伊藤塾 |
| 科目 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 民法 | 『司法試験・予備試験 趣旨・規範ハンドブック』 | 辰已法律研究所 |
| 民法 | 『司法試験・予備試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本 』 | 辰已法律研究所 |
| 民法 | 『 論文過去問マスター答練 』 | 伊藤塾 |
| 科目 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 刑法 | 『趣旨・規範ハンドブック 』 | 辰已法律研究所 |
| 刑法 | 『論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本 』 | 辰已法律研究所 |
| 刑法 | 『論文過去問マスター答練 』 | 伊藤塾 |
| 科目 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 会社法 | 『趣旨・規範ハンドブック 』 | 辰已法律研究所 |
| 会社法 | 『 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本 』 | 辰已法律研究所 |
| 会社法 | 『論文過去問マスター答練 』 | 伊藤塾 |
| 科目 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 民事訴訟法 | 『趣旨・規範ハンドブック 』 | 辰已法律研究所 |
| 民事訴訟法 | 『論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本 』 | 辰已法律研究所 |
| 民事訴訟法 | 『論文過去問マスター答練 』 | 伊藤塾 |
| 科目 | 教材 | 提供 |
|---|---|---|
| 刑事訴訟法 | 『趣旨・規範ハンドブック』 | 辰已法律研究所 |
| 刑事訴訟法 | 『司論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本』 | 辰已法律研究所 |
| 刑事訴訟法 | 『論文過去問マスター答練』 | 伊藤塾 |
2026年6月10日
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