不任意自白の派生的証拠の証拠能力

不任意自白の派生的証拠の証拠能力について論ずる際には、やはり違法排除説から論じるべきなのでしょうか?一般的に自白法則の趣旨について論じる際には、任意性説(折衷説)を自説としているのですが、任意性説から、論じる際に不任意自白を採取するような取調べの抑止効から論じることは危険でしょうか?
未設定さん
2015年11月17日
刑事系 - 刑事訴訟法
回答希望講師:伊藤たける
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
加藤喬の回答

 不任意自白の派生的証拠については、①まずは、虚偽排除説から、内容虚偽の危険性が切断されていることを指摘した上で、②自白獲得手続に違法性があることをなんとか認定し、違法収集証拠排除法則に乗せて、最高裁の違法性承継(同一目的+直接利用、又は密接関連性)を使って判断するというのが、無難であるとともに、書きやすいと思います。

 なお、任意性説からであれば、人権擁護の観点から、不任意自白を採取するような取り調べの抑止効という理由で証拠能力を否定することが可能です。

 例えば、事例演習刑事訴訟法(古江、第4版)219~220頁では、「不任意自白に由来する派生的証拠の排除は、人権擁護説なら、うまく説明できるのではないかな。黙秘権など人権の保障のために自白を排除するのであれば、派生的証拠までも排除しないと、人権保障の目的を完追できないとの理論が成り立つからね」とされています。

 虚偽排除説から派生的証拠の証拠能力を否定することは困難ですが、任意性説に立ち、派生的証拠の場面では、人権擁護の側面を全面に出して、上の「」のように論じることができます。

 なお、不任意自白の派生的証拠についての説明については、以下の私のブログの内容も参考にして頂けると幸いです(司法試験委員会の理解も書いてありますので)。
⇒ http://ameblo.jp/byoosoku/entry-12087585874.html

2015年11月17日


未設定さん
ご丁寧な返答本当にありがとうございます。
回答の一番上の箇所は、自白獲得手続に違法性が認定できる場合の流れだと思いますが、自白獲得手続に違法性が認定できない場合(例えば、約束による自白等)には、人権擁護の観点から、不任意自白を採取するような取り調べの抑止効という理由で証拠能力を否定するという流れでかくということで大丈夫ですか?
人権擁護の観点から抑止効を理由に証拠能力を否定するのは少数説だと講義等で指摘を受けたので、少し不安がありまして。

ご返答よろしくお願いします。

2015年11月19日