司法試験論文H24刑法

この問題で、私文書偽造を検討することになると思います。その際、文書の性質を考慮することを規範に出し、承認を受けている甲と承認を受けていない甲というように名義人と作成者を認定して有印私文書偽造を認めるのは可能でしょうか。
2019年3月6日
刑事系 - 刑法
回答希望講師:国木正
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
国木正の回答

回答の前提として一点確認させてください。
平成24年度の出題趣旨はご覧になられましたでしょうか。

2019年3月11日


匿名さん
はい。「最決平成15年10月6日刑集57巻9号987頁の考え方に従って,本問における作成名義人を社員総会議事録作成権限が付与された甲と考えることも可能であろう。」という記載ですね。友人との過去問ゼミで、友人は社員総会の総意で利益相反を認めている意思が文書の記載自体から読み取れるから名義人は社員総会と考えたのに対し、私は文書の最後にある署名押印に注目しつつ、社員総会の承認を得た甲といえるのではないか考えました。そこで、友人と平成15年判例の射程がどこまで及ぶのか議論となり、お互い腑に落ちない状態となってしまいました。

2019年3月12日

ご回答ありがとうございます。

社員総会議事録を見た一般人にとって、当該議事録は承認を受けている甲(適式に議事録作成権限を与えられた甲)が作成するから重要であると考えることを理由に、本件議事録から看取される名義人を”承認を受けている甲”(適式な議事録作成権限を有する甲)と認定し、実際の作成者を”承認を受けていない甲”(適式な議事録作成権限を有しない甲)と認定したうえで、両者は人格が同一でないとして、「偽造」とすることは可能です。この場合、本件文書に「議事録作成者 代表社員甲 印」とある点を指摘し、有印私文書偽造である旨まで記載すべきです。

これに対し、社員総会議事録を見た一般人にとって、当該議事録は代表役員甲が作成するから重要なのではなく、A社が作成した文書だから重要であると考えることを理由に、本件文書から看取される名義人を”A社”と認定し、実際の作成者を”代表役員甲”と認定したうえで、両者は人格が同一でないとして、「偽造」と認定することも可能です。この場合、本件文文書にはあくまで「議事録作成者 代表社員甲 印」とあるのみで、「議事録作成者 A社 印」とはなっていない点を指摘し、無印私文書偽造である旨まで記載すべきです。

これといった一つの処理が決まっているわけではありません。

2019年3月13日


匿名さん
丁寧な回答ありがとうございました。何を重視するかで結論が変わるのですね。無印の成立事例をあまり見たことがなかったので参考になりました。

2019年3月13日