将来の訴えの利益

継続的不法行為のときには請求適格を検討しますが「あらかじめ訴える必要」=紛争が現実化し現在の判決で解決できるかも検討する必要する必要はありますか?
それとも継続的不法行為の場合はする必要がないのでしょうか。
2019年1月19日
法律系資格 - 予備試験
回答希望講師:中村充
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中村充の回答

継続的不法行為のケースに限らず、請求適格とは別に、「あらかじめその請求をする必要がある場合」(民訴法135条)に当たるかも検討する必要があります。

大阪国際空港事件(最大判昭56.12.16)では、「民訴法」135「条は、あらかじめ請求する必要があることを条件として将来の給付の訴えを許容しているが、同条は、およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。」と判示されています。
つまり、「あらかじめ請求する必要がある」という要件をみたす「給付請求権のすべてについて…将来の給付の訴えを認めたものではなく」に続き、「既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し…」と、あの請求適格の3要素っぽい内容を述べているので、請求適格とは別に「あらかじめ請求する必要がある」という要件も設定されていると読むのが自然でしょう。

有斐閣『平成24年度重要判例解説』P130(日渡紀夫先生の解説部分)でも、「判例・学説は、条文の要件…の前提として,『請求(権)』としての適格』を有すること(判例)や、『基礎となる請求権』に含まれていること(学説)も、要件としている。」とされています。

2019年1月21日