みなし事業者について

独禁法2条1項後段によれば、役員等は2条2項の適用において、事業者とみなされます。とすると、例えば、A・B・C各社の役員等であるa・b・ cらの組織する団体が事業者団体に当たるか問題となる場合、構成事業者たるabcの共通の利益を検討することになると思います。しかし、事業者団体の主要な目的がABC社の共通の利益を増進することにある場合、事業者団体をABCの組織する団体と見る方が素直なような気がします。もっとも、このように考えると構成事業者がABC社になることになってしまい、事業者団体がABCの結合体と言えないことになってしまうと思われます。どのように考えればこの問題を回避することができますか?
2018年12月25日
選択科目 - 経済法
回答希望講師:中山涼太
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
中山涼太の回答

事業者団体規制は、個々の事業者から独立した上位の意思決定によって幅広い事業者に対し強力な組織的拘束力が及び、競争に与える悪影響(の潜在的可能性)が大きいことから設けられた規制です。意思決定が大事なのでその主体が会社等の営業主体である必要はありません。
みなし事業者にあたる役員等が共通の利益寄与を主たる目的とすれば、その複数の役員等が事業者団体に当たると考えればよいです。
前置きが長くなりましたが、ご質問について。事業者団体該当性を検討する際の『共通の利益』とは、この場合何を指すか。
この問題はみなし事業者の要件に目を向ければ答えが出ます。
役員等がみなし事業者に当たるのは帰属する事業主体(会社等)の利益のために活動しているからであり、みなし事業者によって構成される事業者団体の『共通の目的』とは、それすなわち事業主体(会社等)の共通の利益に他なりません。
つまり、役員等が各々の事業主体の共通の利益のために意思決定を行い、8条違反の行為をもたらせば、会社ではなく役員等が事業者団体の構成員として規制対象になるわけです。
このような解釈をする実益は、本来の意味での事業者(会社等の事業主体)が複数構成員に含まれていない団体(医師会とか薬剤師協会みたいなもの)にも規制を及ぼし得るという点にあります。
そこまで解説してくれている基本書は、有名どころだと白石独占禁止法(独禁法講義じゃない方。第3版なら460頁)くらいしか見当たりませんね。
以上のように整理すれば、お尋ね頂いている問題は解消されると思います。お答えになっていれば幸いです。

2018年12月25日


匿名さん
とても分かりやすい説明でをありがとうございます。
白石先生の本の意味もようやく理解できてよかったです。

2018年12月25日

お役に立てたようでよかったです。

2018年12月25日