会社法の諸論点について

いつもご回答いただきありがとうございます。①429条の責任において、直接損害においては、再建可能性・倒産処理などを検討する義務を善管注意義務としますが、間接損害の場合には、何を善管注意義務の内容とすればよいですか?②答案において、差止め(210条)が出て、仮差し止めも検討する場合に、要件であるア被保全債権の存在とイ保全の必要性についてですが、アの中で210条が認められるかを検討するということでしょうか?それとも210条という条文だけあげて、答案を書くべきですか?
2018年12月24日
民事系 - 商法・会社法
回答希望講師:中山涼太
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
中山涼太の回答

①挙げられている損害の例がどういう文脈でのお話かは分かりませんが、その義務違反により会社が倒産したというような事例を想定しての例示だとすれば、むしろそれこそが間接損害なのではないか、と思います。
質問にお答えできているか分かりませんが、直接損害というのは取締役の義務違反によって正に損害がもたらされる場合であり、間接損害は一旦会社に損害が生じることによって、その財産を引き当てとしていた債権者が害されるような場合を指しています。その辺りの具体例は百選なり基本書なりに載っているので良く読み返して下さい。最近人気の田中亘本(新版じゃない青いカラーのやつ)だと351頁以下なんかにはっきり書いてくれています。
②答えとしては210条の要件検討としてかいてください。仮差止めは『民事保全法の仮地位仮処分という手続を利用すべき』という趣旨で答案に示すのがお作法です。ただし、アが仮処分の要件になっているので検討事項が被る、という話ですね。仮処分との関係では、むしろ『210により差し止めが認められ得る。もっとも差止め訴訟の確定を待っていては新株発行を阻止できず、損害を生じてしまう。そこで要件該当性を示す証拠等によりアイを疎明し、仮地位仮処分を申し立てるべきである。』といった感じに締め括ればいいと思います(アイは便宜上はしょったので答案にはちゃんと書いて下さい)。仮地位仮処分の考え方・書き方についてはオレンジの演習書が詳しかったと思います。
※なお、記載例は今適当に考えたものなので、より正確な表現や、こなれたコンパクトな表現は別途研究してください。悪しからず。

2018年12月25日


匿名さん
①組織再編で合併比率の不公正発行の問題で、合併無効の訴えを提起して、条件が不公正な組織再編は無効事由に当たらない→831条1項3号に当たれば無効事由となる論点で、組織再編の承認総会の瑕疵についての訴えは、組織再編無効の訴えに吸収されるかという論点をどの段階で書きますか。②公正な価格について、組織再編の企業価値が増加する場合には~、企業価値がない場合には~として書きます。その後に、裁判所の合理的な裁量に決定するという記載を答案のどこで書けばよいですか?自分の中で、公正な価格を場合分けして、さらに裁判所はどのように判断するかを書くのは何か不自然な感じもするのですが…

2018年12月25日

①前提として、合併比率不公正の問題と利害関係人参加が必ず連動する訳ではないと思うので、もしその一連の流れを論パとして覚えているのだとすれば危険です。
お聞き頂いている論点を整理すると、
・決議取消事由があり合併承認決議が取り消されれば決議がないことになるので、重大な法令違反で合併無効事由になる。
・しかし、取消訴訟が確定しなければ現実の決議は有効で合併の効力を争えず、組織再編無効の訴えの出訴期間を過ぎてしまう。そこで、 組織再編無効の訴えのなかで決議取消事由を組織再編無効事由として主張するのを許すべき。
となりますね。これを書くなら、無効の訴え提起→無効事由は法的安定のため重大な法令違反に限る→承認決議の未了は重大な違法→決議取消事由があるので取り消されれば未了となり無効事由にあたる→しかし確定までは云々…といった順で最後の方に書くことになるでしょう。
②まず、価格決定申立てをしていれば、公正な価格を決めるのは全て裁判所です。
・Ⅰ組織再編が癒着なく適正な手続に則って行われ、かつ既存株主に会社の増加価値を公正に分配できていれば、その結果は組織再編を公表した後の市価に現れるはず、Ⅱ組織再編を行う役員は通常自社の株主利益を最優先に考えるから、癒着さえなければ適正な手続の履践と株主への公正利益分配は心配しなくてよかろう、という推論から、会社同士の独立性が保たれていれば裁判所は基準日(買取請求日等)の株価を基準に公正価格を決定します。
・そうした独立性がない場合には、株価には利益公正分配の結果が現れていない可能性があるので、裁判所は独自の裁量により公正な価格を決定します。
その際の仕分けがシナジー分配かナカリセバか、という話です。
ということで、裁判所が合理的裁量をもって決定するかどうかはむしろ最初に書くことになると思います。この辺りは判例も大分出揃ってきて、文献でもうまくまとめてくれているはずなので、復習してみてください。加藤貴仁先生や飯田先生の雑誌の解説は読みやすかった記憶があります。

2018年12月25日