非ハードコアカルテルについて

公正取引委員会平成19年相談事例集事例3「レジ袋の利用抑制のための有料化取り組み」について質問です。
かかる5円しか上がらないことについては、実質的制限に当たらないという理解でよろしいでしょうか?それとも、公共の福祉に反しないという理解でよいでしょうか? 競争促進効果を実質的制限で読み込むのか、公共の福祉で読み込むのかわかりません。
2018年12月21日
選択科目 - 経済法
回答希望講師:中山涼太
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
中山涼太の回答

競争の実質的制限を『反競争性』+『正当化理由なし』と捉えているのか『反競争性』のみで捉えているのか分かりませんが、
相談事例集の回答を精読する限り『反競争性なし』と『正当化理由あり』の両方だと思います。
前者についてはレジ袋を副次的サービスと捉え、袋を含めたスーパー商品全体の市場を画定しているところがミソだと思います。
後者については①『他の手段での限界』等の事情から5円合意の正当性・必要性があること、②金額からして消費者に過剰な負担とならず、導入しなければレジ袋の排出抑制が達成できないため手段の必要性・相当性があることをもって『正当化理由あり』としているように読めますね。
注意したいのは『正当化理由』=『公共の福祉』=『競争促進効果』ではないことです。
競争促進効果は説が分かれるので『反競争性』と『正当化理由』のどちらで検討しても良いですが、それ以外は大抵『正当化理由』に位置付けた方がよいと思います(企業結合は別です)。
そして、レジ袋の価格協定には少なくとも競争促進効果はありません。
そこさえ混同しなければ、あとはご自身の支持する考え方に従って書けばよいと思います。

2018年12月21日


匿名さん
ご回答いただきありがとうございます。❶非ハードコアカルテルの場合には、競争の実質的制限において、反競争効果が明らかでないため、反競争効果と競争効果の比較考慮をして、実質的制限に当たるかという答案の流れでよろしいでしょうか?また、❷「公共の福祉に反して」という要件に関しては、目的の合理性・内容の合理性・手段の相当性という理解でよろしいでしょうか?❸共同購入のように市場が2つ出てくる場合があるのですが、どのような場合に市場が二つ出てくるかのイメージがわかないのですが、何かいい方法はないのでしょうか?

2018年12月21日

①教科書によってはハードコア=競争制限効果しかなく原則違法、非ハードコアカルテル=ケースバイケースという分け方がされていることもあるかも知れませんが、答案上は『非ハードコアカルテルなので比較考量』と書くのはあまり良くないとわたしは考えています。ハード、非ハード問わず、判断枠組みについては『市場支配力の形成維持強化』(書くときはもうちょっとちゃんと書きましょう)を示して、競争促進効果が問題になるときは具体的検討の中でしれっと触れればよいと思います。
②それでよいと思います。もし30年もご購入頂けるのであれば、そこでも言及していますのでリリースをお待ち下さい。それ以外にも、白石先生の独占禁止法(第三版)とか独禁法講義(第八版)などを読んでみると良いと思います。
③これについても講座解説にのせる予定ですが、さしあたりⅠ同一商品役務と言えるかⅡ『需要の代替性』があるか、Ⅲ抱き合わせなど、要件上2つの市場を検討する必要があるか、Ⅳ出題の趣旨からしてもう一つの市場を考える必要がありそうか(二面市場のネットワーク効果など)といった観点から判断すると良いと思います。あとは練習あるのみです。迷ったらどなたかの事例解説を公正取引とかジュリとか法教で拾って読んでみて下さい。(個人的には白石先生がオススメです笑)

2018年12月21日

③補足
事例は大体パターンで整理できる(される)ので、2つの市場が出てくるパターンを概説書やガイドラインで覚えてしまうのも手です。
ただ、市場の個数は問題や事例を素直に読めば大抵は分かるようになっていると思います。
それよりも、その事例がどの条文にかかるなのか、各事実が条文上どの要件に位置付けられるのかを学習された方が効率がよいと思います。

2018年12月21日


匿名さん
❶中山先生の経済法の講義を受講しているのですが、H30年度の解説はいつアップロードされますか?❷なぜレジ袋の事案は、市場がスーパーになっているのですか?自分としてはレジ袋でもいいのではないかと思いました。レジ袋は副次的だからと基本書には記載されますが、よくわかりません。❸不当な取引制限について、自分は、ⅰ共同してⅱ相互拘束という要件です。もっとも多摩談合事件(H24.2.20)において、行為要件を「拘束」「共同して…相互に」としていて、さらにH30の採点雑感が設問⑴に関しては,【「共同して」(又は「共同して・・・相互に」)を満たすかと】記載していることから、多摩談合事件に合わせるべきですか?

2018年12月22日

①受講ありがとうございます。12月中には30年がだせると思います。
②商品に対する需要の特性だと思います。スーパーで買い物をするとき、お客さんは何もレジ袋が欲しくて買い物にいくわけではないですよね。そして、ほかの品物をかったら袋は欲しいけれど、ゴミ捨て用にポリ袋を買うのとは違って、逆にレジ袋だけが欲しいという需要は普通はない、とい分析があって、スーパーの商品全体を市場にしているのだと思います。
理論的には分けることも可能だと私も思いますが、現実の事案の実態にそぐわないのでそれ以上は市場を分解していない、というのが公取委の回答の前提になっていると思います。
③これは正に30年解説で触れてます。採点実感では前の年度からどっちで書いても良いとされていますが、学者の中ではまだまだ批判の声の方が大きそうなので、あえて多摩談合に合わせる必要があるかといえば、その必要はないと思います。詳しくはリリースをお待ち下さい。

2018年12月22日


匿名さん
最後に❶「不当に」についてです。条文により「不当に」の内容が独占禁止法上違法な行為の実効性を確保するため❷独占禁止法上不当な目的を達成するため【取引拒絶】や、公正競争阻害性として自由競争阻害性とする場合【取引妨害】があります。「不当」の中身については条文によって覚えるべきですか?❷事案で、不公正な取引方法と私的独占・不当な取引制限が出た場合に、どっちを先に検討すべきですか?不公正な取引方法を認定して、その後に「排除」を認定するのか、初めに私的独占だけ書いて不公正な取引方法を書かなくてもよいかなど、答案において両方書くべきですか。❸違反行為を様々な独禁法上の条文に該当するかを検討するべきですか?

2018年12月22日

①、②―1について
基本的には条文毎に覚えましょう。ただし、それぞれの条文で問題になり得る事案類型を全て答案に羅列するのはよくないです。その問題の事実から問題になり得るものを書くようにしましょう。
②―2、③について
まずは問題の指示に従いましょう。
指示がないときは、不公正な取引方法と私的独占がセットになっていることが多いですが、どの不公正な取引方法なのか、要件を満たすかにも点が入っているので、先に不公正な取引方法から検討してください。
私的独占は要件が被るので、指示がない限り後で書くのをお勧めします。
不当な取引制限は要件が被らないので、出てきたら絶対書いてください。
なお、私的独占の『排除』は行為要件なので、不公正な取引方法とセットで書くときは、私的独占パートで別途『競争の実質的制限』に触れる必要があります。じゃないと効果要件(弊害要件)に点が入りません。

2018年12月22日