補足しておくと、処分行為の違憲性判断には目的手段審査はなじまないとする見解があるのは事実です。
しかし、それらの見解も、単に行政裁量論である行訴法30条の解釈論になるのではなく、あくまでも「憲法上の主張」をすることになろうかと思われます。
たとえば、「よど号」新聞記事抹消訴訟判決は、憲法から「相当の蓋然性」という規範を導き出し、処分根拠法規の限定解釈を行うことで、具体的な処分が憲法規範に適合するかを審査しています。
泉佐野市民会館訴訟判決も、明らかな差し迫った危険の基準については、同様の判断手法ですが、それ以外にも、敵対的聴衆の法理や見解差別禁止の法理といった憲法規範を導き出し、それに対するあてはめを行っています。
君が代起立斉唱拒否訴訟に関する各判決も、職務命令という行政処分に対する違憲審査を行っており、行訴法30条に関する主張とは区別しています。
万が一、処分行為について裁量権の逸脱濫用のフレームワークが妥当するとすれば、憲法規範が抽象的であり、行政裁量を(法律ではなく)「憲法が」認めている場合です。
処分行為ではありませんが、堀木訴訟大法廷判決は、立法行為について、裁量権の逸脱濫用型のフレームワークを適用しています。
2018年11月27日