回答が遅くなりまして、大変申し訳ございません。
1.警職法2条1項と2条3項の関係
警職法2条1項の「停止させて」として許容される範囲と、2条3項が禁止している行為とは、別次元のものです。
警職法2条1項の「停止させて」として許容される行為は、停止行為のうち、強制手段に当たらず、かつ、任意手段として相当と認められるもの(必要性・緊急性・個人公益と公益との均衡などを考慮して具体的状況の下で相当と認められるもの)です。
これに対し、警職法2条3項が禁止する行為とは、強制手段に当たるものです(リーガルクエストp52は、「強制手段を用いることが許されないことは警職法2条2項及び3項の文言上明らかである。」としており、この記述から、警職法2条3項が禁止しているものは強制手段に当たるものであることが分かります。)。
ですので、職務質問のための停止行為のうち、強制手段に当たるものは、警職法2条3項に違反します。これに対し、強制手段に当たらないもののうち、任意手段としての相当性を欠くものについては、警職法2条1項の問題です。
2.警職法2条3項で禁じられている行為と「強制の処分」(刑訴法197条1項但書)の関係
強制の「程度」としては、同じであるという理解でいいです。
百選解説(第4事件)は、所持品検査についてのものですが、判例が所持品検査の限界の一つとして挙げる「強制」について、「意思制圧の有無の問題であり(本書Ⅰ事件)」としており、百選の第1事件は司法警察活動における強制処分に関するものなので、百選の第4事件の解説でいう「意思制圧」とは、刑事訴訟法197条1項但書の「強制の処分」に当たる「意思の制圧」と同レベルのものを意味しているということができます。
ただ、197条1項但書の「強制の処分」についての昭和51年最決は、同規定が司法警察活動に関する規定であることから、「・・・制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など・・・」というように、司法警察活動であることを念頭に置いた表現も使っていますので、警職法2条3項で禁止される行為について、昭和51年最決の判旨を引用するのはやめたほうがいいです。
3.おわりに
回答が遅くなり申し訳ございませんでした。即答できない問題だったので、労働法の収録などもあり、時間がかかってしまいました。
貴重なご質問ありがとうございます。2月リリース予定の刑事訴訟法の速修テキスト講義に反映させていただきます!
2015年10月14日