回答が遅れ、申し訳ございません。
背任罪は、財物のみならず財産上の利益をも保護の対象とし、しかも不法領得の意思がある場合だけでなく(しかも、図利加害目的は領得意思より広い)、加害目的がある場合にも成立する点で、横領罪より広い範囲をカバーする犯罪です。
そうすると、横領罪がカバーする範囲と背任罪がカバーする範囲が重なってしまいますが、いわゆる背信説はこの問題を次のように整理します。
すなわち、横領行為は背任行為の特殊な一場合であるから、成立範囲が重なるときは横領罪が成立する。したがって、権限逸脱の場合、かつ客体が財産上の利益の場合は、横領罪が成立する。横領罪が成立しない場合、かつ権限濫用の場合と評価できる場合、背任罪が成立する。
さて、ご質問に記載されていたような事案は、客体が財物ではありませんから、権限逸脱かあるいは権限濫用かを検討するまでもなく、横領罪が成立する余地はありません。
このように、横領罪ではなく背任罪を検討すべきことが明確な場合は、背任罪の検討を行う冒頭の問題提起の中において一言断る程度、横領罪について触れるだけでよいとは思います。なぜなら、横領罪自体についてしっかり記述したがために、背任罪についての検討、とくにあてはめが疎かになるのは避けたいからです。
2018年4月21日