民法の担保責任について

民法の担保責任の法的性質について法定責任説に依拠した場合には、売買の瑕疵担保責任(民法570条)以外の売買の担保責任の規定は、不特定物売買には適用されない考えてよろしいのでしょうか。
未設定さん
2015年9月3日
民事系 - 民法
回答希望講師:伊藤たける
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
加藤喬の回答

回答が遅くなりまして、大変申し訳ございません。

瑕疵担保責任以外の担保責任の法的性質について明確に書いている本は多くないので、私も受験時代に頭を悩ませました。

結論として、瑕疵担保責任について法定責任説に立つ場合、論理必然的にそれ以外の担保責任についても法定責任説に立つことになるというわけではないと思います。

少なくとも、瑕疵担保責任についての法定責任説・契約責任説の議論は、他の担保責任の法的性質まで包含するものとして展開されているものではありません。

したがって、瑕疵担保責任について法定責任説に依拠したとしても、そのことが当然に他の担保責任についても法定責任説の立場によるということを包含するものであるとまではいえません。

ただ、瑕疵担保責任の法的性質と、他の担保責任の法的性質は、議論の基礎が共通するものですから、一方で法定責任説、他方では契約責任説という立場に立つことはまずないと思います。

担保責任の法的性質については、潮見先生の「基本講義 債権各論(1)」が非常に参考になります。

瑕疵担保責任を含む民法561条以下の担保責任の法的性質の議論は、売主の担保責任を「引渡義務」の担保責任(=「物の瑕疵」の問題)として捉えるのか、それとも「権利供与義務」の担保責任(=「権利の瑕疵」の問題)として捉えるのかという問題です。

引渡義務の担保責任と捉えると、現状引渡義務(483条)ゆえに、契約締結時点までに生じた目的物の瑕疵は引渡義務違反を構成しないこととなるので、法定責任説に依拠することとなります。

これに対し、権利供与義務の担保責任であると捉えた場合、売主は権利供与義務として「契約内容に照らして所有権を完全に買主に与える」義務を負いますから、目的物の瑕疵は、契約締結時点までに生じたものであっても、権利供与義務違反として債務不履行を構成することなります。なので、契約責任説に依拠することとなるのです。

そして、瑕疵担保責任については引渡義務の担保責任であると捉える一方で、他の担保責任については権利供与義務の担保責任であると捉えるというのは、なかなか説明が難しいところです(必ずしも論理的に矛盾するとはいえませんが)。

なので、瑕疵担保責任の法的性質と、他の担保責任の法的性質は、議論の基礎にある考えが共通するものですから、一方で法定責任説、他方では契約責任説という立場に立つことは、事実上あまりないということになります。

2015年9月11日