ご質問ありがとうございます。
沢田先生に照会させていただきました。
以下、解答を添付させていただきます。
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(1)ご指摘は、訴因変更の可否について、いわゆる副次的な考慮要素である非両立性基準を先に見たうえで判断しているのではないかという趣旨であると推察します。
(2)私の見解は堀江教授の見解に準拠しています。すなわち、公訴を一個の刑罰関心の問題(一個の刑罰権の実現)であると捉え、まず事実の非両立性をみて検討すべき要素を決定しているのです。
事実の非両立というのは、沖縄と北海道で同時に殺人をしたような場合ですね。
非両立なら犯罪が複数成立しない=あくまで狭義の同一性の問題、両立なら犯罪は複数成立しうる=あくまで単一性の問題なのです。両者は同時に検討できる関係にないことがお分かりかと思います(犯罪が複数成立する場合としない場合なので)。よって、まずこのように「事実の非両立性」を頭の中で考えなければなりません(答案の記載は不要です)。
(3)いわゆる副次的な考慮要素としての非両立性は、この先のステップ、すなわち狭義の同一性の判断の一内容にすぎません。こちらでは、同一の事実を異なる側面から処罰しているだけではないか?=訴因変更を認めなければ法的に二重処罰の危険があるのではないか?といった問題意識となります。したがって、こちらではあくまで「法的な非両立性」を見ます。先ほどの北海道と沖縄のケースでは殺人罪が二罪成立しますから、こちらの判断では両立、ということになりますね(まあ、そもそも狭義の同一性ではなく単一性の検討に行くためここの話にはなりませんが)。
(4)以上より、私の処理手順どおりの処理で問題ございません。
(5)仮にご質問の趣旨が私の理解と異なる場合、お手数ですが再度どの点の説明が逆になっているのか具体的にご教授下さいますと幸いです。
2018年1月5日