審査基準の定立について

違憲審査基準を定立する際に、制約の強度を考慮することは理解できます。しかし、ここでの強度が、内容規制なのか中立規制なのか、間接的制約かといったものをみるものであって、処分の要件の範囲が広範だから制約が強度となるものではないと思うのですが、特に根拠が見当たらないため、不安です。よろしくお願いします。H21年の新司を解いていて、遺伝子情報の開示できる場合がかなり限定的であるため、制約が強度という答案に遭遇したため、疑問を持ち始めました。
未設定さん
2015年8月17日
公法系 - 憲法
回答希望講師:伊藤たける
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
伊藤たけるの回答

ご質問ありがとうございます。

違憲審査基準論は、比例原則を事案類型ごとにルール化したものです。
そのため、①制約の程度が強いのであれば、クリアすべき審査基準も強くなります、

また、違憲審査基準は、違憲審査権という権力分立システムの一翼です。
そのため、①制約の程度の他に、②違憲の疑いの強弱≒立法裁量の広狭という指標も重要となります。

ご質問の「内容規制なのか中立規制なのか」というのは、①制約の程度の問題ではなく、②違憲の疑いの強弱の指標です。

例えば、全ての表現について、インターネット上で表現することはできないという規制は中立規制になりますが、野党を応援するツイートはできない(ツイート以外は全部OK!)という内容規制よりも、①制約の程度は大きいはずです。
しかし、②野党排除という違憲の疑いが極めて強いものであるから、後者には厳格な違憲審査基準が適用されるのです。

なお、間接的制約については難しいところがありますが、私は①に分類しています。

ご質問の規制対象が広範囲であることは、どちらかというと①の問題のように思います。
①制約の程度というのは、範囲の他に刑罰などのような罰の重さも類型的に問題されますからね。

とはいえ、強い、弱い、という議論は、水掛け論になりがちであり、主観論が先行します。
なるべく、比較対象を特定した上で、これよりは強力だ、と論じるべきでしょう。
そうすると、平成21年の問題で開示範囲が限定的であることが、わざわざ「強い」といえるかは疑問ですね。

2015年8月18日


未設定さん
審査基準定立の段階で、刑罰の重さといった制約の程度を確認すると、正当化論証における相当性と確認する内容が同じになってしまう気がするのですが、よいのでしょうか。

2015年8月18日

刑罰の重さについて、制約の程度と手段相当性の双方で論じることを禁止する理由はないでしょう。
仮に、単なる違和感であれば、書いていればなれます。

もっとも、刑罰だからどうだ、といった制裁の程度の議論は、懲戒処分で足りる場合などのLRAが存在する場合を除いて、そこまで意味のあるものではないように思います。

むしろ、論じるべきは、対象となる行為を禁止することにより生じる憲法上の権利の制限の程度です。
その結果、制裁がどうなるかという議論は、些末な問題です。

例えば、猿払事件でも、刑罰そのものよりも、政治的行為の禁止をすること自体が中心的な争点です。

2015年8月19日