一般的には、判例の判断枠組み(判断基準+具体的判断要素)について争いがない場合には、理由付けの論述の優先順位は低いです。
労働法における優先順位は、①判例の判断枠組み⇒②当てはめ⇒③理由付けだからです。
特に、判例の判断枠組みへの言及は必須であり、これができていないと論証の理由付け・当てはめにはほとんど点が入りません。
なので、①判例の判断枠組みと②当てはめの分量を削るくらいなら、理由付けを削ることになります。
但し、理由付けの省略はあくまでも最終手段です。
また、仮に最高裁判例によって判断枠組みが確立されている論点であっても、例えば、時間外労働義務の発生根拠など、理由付けの重要性が高い論点については、理由付けも必要です。
さらに、裁判例や学説間で判断枠組みについて争いがある論点については、理由付けは必須です。
例えば、平成26年第1問の採点実感では、変更解約告知の解雇権濫用の判断枠組み係る論証について、『変更解約告知は・・・労働条件変更の手段として行われるという・・・特殊性を考慮に入れて規範を定立すべきではないかという問題意識を的確に論述できている答案は、出題者が想定していた答案よりも少なかった。・・・かかる問題意識に言及せずに、いきなり整理解雇の四要件(ないしは四要素)を定立して当てはめを行う答案が少なからず存在したが、・・・前述のような問題意識を論述できていた答案に比して、相応の点数しか与えられなかった』という指摘がなされています。
このように、理由付けを省略できるかどうかは、論点の性質や、当該事案における論点の問われ方によって決まってきます。
具体的な取捨選択の方法については、8月末頃に発売予定の『労働法1位が教える!判例による過去問完全攻略講座』で2500文字以内の模範答案を使って解説しています。
サンプル講座(平成22年第1問、約1時間、解説テキスト・模範答案DL可)だけでも、論述のバランスの習得に非常に役立ちますので、視聴してみてください!
2015年8月14日