憲法13条の保障について

「憲法判例の射程」という本の中で、
判例により認められた「個人の私生活上の自由」を整理すると、情報収集に着目するものと、情報の開示・公開に着目するものに区別できる。前者については保障の趣旨が及ぶ、後者については直接にその保障が及ぶ。そして、情報の秘匿性、センシティブ性という情報の質にも着目する。情報の局面と情報の質を勘案して、制限の評価と正当化の程度を判断する。
といった趣旨の記載があります。情報の質の議論は分かるのですが、情報の局面で、どのような差異が生じるのかがよくわかりません。教えていただけると幸いです。また、このような議論を追いかけるのは司法試験との関係上、不必要なのでしょうか。
2017年9月30日
法律系資格 - 司法試験
回答希望講師:伊藤たける
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
伊藤たけるの回答

ご指名ありがとうございます。

その議論は割と有名ですので、司法試験との関係でもおさえておくべきではないかと思います。

最近の私の講義や連載の中でも扱っている議論ですが、個人に関する情報に関しては、①収集、②管理・利用、③開示・公表の3つがあるという整理が有名です。
かつての伝統的なプライバシー論は、①と③の局面のみが保護の対象でした。たとえば、私生活を知られない利益は①、私生活を公表されない利益が③です。

他方、情報化社会により、②管理・利用についても、保護を及ぼすべきではないかという議論が登場しました。
住基ネット判決は、まさにこれが問題となったわけで、大阪高裁はこの点を的確にとらえたものの、最高裁は伝統的プライバシー論に逃げてしまい、③の局面に無理やり押し込めたのです。

なお、学説上の議論を追いかけることの危険性は指摘されるところですが、この議論は超有名かつ住基ネット判決の評釈にかかわるものですから、むしろおさえておかなければならないものでしょう。
要するに、判例の評釈にかかわる議論はおさえる、いわゆる基礎研究のような理論的なものはおいておく、といったメルクマールがあるとよいでしょう。

かつての演習書にはそのような区別があるか疑問なものがありましたが、憲法判例の射程に掲載されている議論は、むしろおさえておくべきものばかりですから、しっかりと学習をしておいてください。
あの書籍は、とても受験生のことを考えているものですよ。

2017年9月30日