少なくとも、個々の事案における具体的な規制の必要性については、違憲審査基準のグレードを設定する際には考慮されません。
これに対し、職業の自由のように、その一般的な性質及び憲法の規定から、何らかの規制の必要性が内在的に認められる権利との関係では、そのような意味での一般的な規制の必要性の強さを、違憲審査基準のグレードに反映することができるかもしれません。
例えば、薬事法違憲訴訟判決は、違憲審査基準を設定する際に、「職業は、・・・その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、・・・精神的自由に比較して、公権力による規制の要請がつよく、憲法22条1項が『公共の福祉に反しない限り』という留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、特にこの点を強調する趣旨に出たものと考えられる。このように、職業は、それ自身のうちになんらかの制約の必要性が内在する社会的活動である」ということを考慮しています。
ただ、本判決は、職業の自由について何らかの規制の必要性が内在していることを肯定するに当たり、社会的相互関連性の強さという権利の一般的性質のみならず、憲法22条1項による『公共の福祉に反しない限り』という留保も根拠にしていますから、本判決のように、一般的な規制の必要性を違憲審査基準のグレードに反映するというパターンはかなり稀であると思います。
ですので、少なくとも司法試験との関係では、規制の必要性については、違憲審査基準の設定段階では論じないで、手段審査として論じる、という理解でよいと考えています。
2015年8月5日