ご質問ありがとうございます。
まず、原告と被告が違う条文を主張するというのは、攻撃防御方法として噛み合っていないように思います。
仮に、原告が営業の自由の制約を主張したとして、被告側が財産権の問題だと考えているとしても、なぜ、営業の自由の制約はないのかを反論しなければなりません。
しかも、原告が主張していない憲法上の権利について、あえて被告側が違憲審査を求めるという状況も想定し難いですよね。
どちらをメインに書くかは事案によります。
例えば、平成29年予備試験の問題文のようなケースならば、原告側が財産権違反の主張を絞っていますから、通常の代理人であれば、その意向を踏まえるでしょう。
仮に、原告側の意向が不明ならば、どちらの権利主張が、憲法上の権利の核心の制約と近いといえるかで判断することになるでしょう。
上記のケースでは、思い通り売れないことの問題点もあり、理論的には営業の自由に関する主張はありえますが、そもそも営業の自由は、職業選択の自由の周辺的保障であり、中核的保障ではありません。また、目的二分論が適用される領域ですから、小売市場判決の射程も限定する必要があり、見通しはかなり悪いですよね。
他方、国民の財産を破棄せよと命ずることは、財産権の保障の核心の1つであり、森林法判決も認めている「国民の個々の財産権」に対する制約です。また、証券取引法事件判決以降は、目的二分論を放棄したように読めますので、それなりの審査密度を期待できます。
このように、憲法上の権利が保障している中核は何か、言い換えれば、典型的な侵害は何かをキチンとおさえておけば、判断は簡単になります。
保護範囲をなんとなく覚えているだけでは、具体的事例では全く役に立ちません。
職業選択の自由や表現の自由のみならず、財産権、思想・良心の自由などの中核は何かについて、私も著者の一人である『基本憲法1』などで、しっかりと確認をしておきましょう!
基本憲法I 基本的人権 https://www.amazon.co.jp/dp/4535521379/ref=cm_sw_r_cp_api_LjECzbC0XGQAD
2017年7月21日