22条と29条の保護範囲について

22条と29条の保護範囲について質問です。
22条は営業の自由を、29条は財産権を保障していますが、財産権の侵害が同時に営業の自由の侵害にもなりうるような場合(例えば、自分の作った農作物を自由に売れなくなるような法律ができた等)、どちらをメインにして書くのでしょうか。
その際、原告は22条を、被告は29条をメインに戦うということも考えられるのですが、そのような書き方は水掛け論にならないでしょうか。
2017年7月21日
公法系 - 憲法
回答希望講師:伊藤たける
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
伊藤たけるの回答

ご質問ありがとうございます。

まず、原告と被告が違う条文を主張するというのは、攻撃防御方法として噛み合っていないように思います。
仮に、原告が営業の自由の制約を主張したとして、被告側が財産権の問題だと考えているとしても、なぜ、営業の自由の制約はないのかを反論しなければなりません。
しかも、原告が主張していない憲法上の権利について、あえて被告側が違憲審査を求めるという状況も想定し難いですよね。

どちらをメインに書くかは事案によります。
例えば、平成29年予備試験の問題文のようなケースならば、原告側が財産権違反の主張を絞っていますから、通常の代理人であれば、その意向を踏まえるでしょう。

仮に、原告側の意向が不明ならば、どちらの権利主張が、憲法上の権利の核心の制約と近いといえるかで判断することになるでしょう。
上記のケースでは、思い通り売れないことの問題点もあり、理論的には営業の自由に関する主張はありえますが、そもそも営業の自由は、職業選択の自由の周辺的保障であり、中核的保障ではありません。また、目的二分論が適用される領域ですから、小売市場判決の射程も限定する必要があり、見通しはかなり悪いですよね。
他方、国民の財産を破棄せよと命ずることは、財産権の保障の核心の1つであり、森林法判決も認めている「国民の個々の財産権」に対する制約です。また、証券取引法事件判決以降は、目的二分論を放棄したように読めますので、それなりの審査密度を期待できます。

このように、憲法上の権利が保障している中核は何か、言い換えれば、典型的な侵害は何かをキチンとおさえておけば、判断は簡単になります。
保護範囲をなんとなく覚えているだけでは、具体的事例では全く役に立ちません。

職業選択の自由や表現の自由のみならず、財産権、思想・良心の自由などの中核は何かについて、私も著者の一人である『基本憲法1』などで、しっかりと確認をしておきましょう!
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2017年7月21日