既判力の作用

既判力が作用する先決関係とは抽象的に言うといかなる場合をいうのかがわかりません。基本書には具体例しか書いておらず、実際の問題を解く際に先決関係かどうか良く分からないことがままあります。
また、既判力の作用と客観的範囲・主観的範囲等はどちらを先に論じるべきかも良く分かりません。作用しないなら後者を論じる実益はないとも思うのですが。
2017年7月14日
法律系資格 - 予備試験
回答希望講師:大林尚人
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大林尚人の回答

1 既判力が作用する先決関係
 先決関係とは、前訴訴訟物が後訴訴訟物の前提問題となっている場合です(読解民訴訟141頁)。
 基本書に挙がっている具体例は、前訴が「甲土地の所有権確認請求」で後訴が「甲土地の所有権に基づく明渡請求」という事例だと思います。私が、問題演習をしてきたなかで、先決関係でこの事例以外が問われた経験はなかったと記憶しています。ですから、先決関係はこの具体例の理屈を理解しておけば十分だと思います。既判力の作用場面はなかなかイメージがしにくい分野だと思うので、演習を通じて具体的な処理を繰り返してみてください。

2 既判力の論じ方
 既判力は、①客観的範囲(=既判力が生じる)→ ②既判力が作用する場面である+③主観的範囲(=既判力が拡張される)の順番で理解しておきましょう。
 まず確定判決があれば必ず①既判力が生じます。もっとも、既判力が後訴に作用するのは、②既判力の作用場面であり、かつ、③主観的に既判力が作用する(115条1項)といえる必要があります。ですから、②既判力の作用場面でない場合は、質問者さんの理解通り、③主観的範囲を論じるまでもなく、既判力は後訴に作用しません。

 例えば、Xの債権者ZによりXのYに対する貸金返還請求権の債権者代位訴訟で請求認容判決がなされた後に、XのYに対する貸金返還請求訴訟が提起された場合の論じ方は以下のようになります。①まず前訴の既判力は「XのYに対する貸金返還請求権が存在する」という判断に生じています。②そして前訴と後訴の訴訟物は同一関係ですから、後訴に既判力が作用する可能性があります。もっとも、前訴と後訴では当事者が異なりますから、原則として既判力が作用することはありません(115条1項1号、相対効の原則)。しかし、③この場合は115条1項2号でXに既判力が拡張されますから、前訴判決の既判力は後訴に作用します。

補足: 既判力は「生じる」と「作用する(=及ぶ)」という言葉を正確に用いることが理解への第一歩です。確定判決があれば必ず既判力が「生じる」といえます。もっとも、その既判力は必ずしも後訴に「作用する(=及ぶ)」とはいえないという関係にあります。『読解民事訴訟法:勅使川原』は、既判力について詳細かつ分かりやすく説明しているので、よろしければ、そちらも参照してください!

2017年7月14日