可変的性質を持つ費用を下回る価格であれば「供給に要する費用を著しく下回る価格」にあたると推定できるという解釈論の理由づけとして、不当廉売の規制理由への言及が期待されたのだと理解しています。
これは、かかる解釈が、条文の文理からは読み取り難いものだという特殊性によるものだと考えています(私は正当な解釈であると一応考えていますが)。
また、不当廉売規制については、「安売りという一見価格競争に資する行為が規制されるべき理由」の理解が最も重要な学習ポイントであることから、採点上も特に見たいところだったのかもしれません。
それに比べ、「共同して」、「拘束」、「拒絶」といった他の条文上の行為要件は、文理から無理のない解釈が可能なものが大勢です。それゆえ、これらについて趣旨に照らした解釈論の提示が積極的に求められることは通常ないでしょう。採点上のポイントも、効果要件の有無検討に重点が置かれるでしょう(ハードコアカルテル・入札談合は例外ではありますが)。
したがって、すべての条文についてまで要件解釈の際に規制理由に言及するべきとまで考える必要はないと思います。
2017年2月12日