強制処分・任意処分の区別のあてはめについて

3ステップ各論刑訴のレジュメには、強制処分・任意処分の論証について「判例でも有力説でも、論じるべき事項は同じ」と記載されています。
確かに論じる事項は全体としてみれば同じだと思うのですが、判例と有力説では①要件(意思制圧or意思に反して)が異なる以上、あてはめが少し異なることにはならないのでしょうか?
具体的には、有力説では②要件(重要な権利利益の制約)の判断がメインとなり、その中で行為態様も考慮する、一方、判例の立場からは、①要件の判断がメインであり、その中で行為態様を考慮する、という理解はおかしいでしょうか?
それとも、ここまで細かく考える必要はないのでしょうか?
2016年10月22日
刑事系 - 刑事訴訟法
回答希望講師:田澤康二
回答:1

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田澤康二の回答

最決昭51.3.16(9版1事件)について,もう少し敷衍しておきますね。
・意思の制圧・・・相手方の明示又は黙示の意思に反するといえれば良い(合理的に推認される当事者の意思に反するか否か)。
・重要な権利制約・・・制約されている権利はどんな権利なのか,その権利が重要な権利・利益にあたるのかを検討。およそ何らかの権利や利益の制約があれば強制処分だではなく,法定の厳格な要件・手続によって保護する必要のあるほど重要な権利・利益に対する実質的な侵害ないし制約を伴う場合に初めて強制処分になる,と理解されましょう。

とはいいつつ,判例の規範の理解の仕方については様々な見解があります。
“強制的に捜査目的を~”以下については特に意味を有しないとする点には争いはないものの,「個人の意思を制圧し」の部分「身体~等に制約を加え」かによって分かれています。
ご質問との関係では,結局,いかなる性質の法益がどの程度制約されているのかを、しっかりと当てはめられれば十分だという説明との関係で,あてはめで論ずべきことが異ならないと説明したまでです。
もちろん,ご指摘のようにあてはめに変わりがあったとしても,検討の対象とすべき事実関係は,当然同じですから,両説とも,当てはめる対象は同じ事実だというまでです。

2016年10月27日