大変丁寧なご対応を賜り,感謝申し上げます。
さて,両方ありうるというのは,争点との関係で,
なにが要証事実になっているかは相対的に決せられるわけです(ご存知のように,このように規範を立てるでしょう)。
ご指摘の理解をさらに,敷衍すると,
少なくとも,被告人の悪感情というのは,殺人罪の犯人性が問題となっている局面では,
弱いながらも推認力を有しているというべきでしょう。
ご指摘のように,殺人罪の犯人として浮上するだけの「動機」が存在する,
という意味では積極方向に働きます。ご指摘のように,これを伝聞と理解すると,
『なぜ,そんな動機を有するに至ったのか』の点について,原因となるべき行為が存在したのかなど,
真実性が問題となってきますね。
もちろんご指摘の判例のように,強姦致死罪の犯人性が問題となっている事案で,
伝聞と判断された例を考えると,違和感をもつのはもっともです。
ですが,その事案の証拠上の立証構造からすると,伝聞であった,ということです。
イメージを持つには,個々の事案の証拠構造に触れるのが一番ですが,
『なぜ,そんな動機を有するに至ったのか』真実,原因となるべき行為が存在したのかなどをそう適してみると,少し見え方が変わったりしないでしょうか。
2016年9月21日