ご質問ありがとうございます。
国籍法違憲判決それ自体は、立法裁量を「前提」としたうえで、①国籍の重要性、②脱却可能性のなさを理由として、「手段審査のみ」厳密に判断するというアプローチと読むのが、もっとも正確ではないかと思われます。
というのも、立法裁量を尊重した場合には、目的は正当性の確認しかしておらず、踏み込むことができないからです。
小山剛先生によれば制度準拠審査の一類型となります。
青柳元教授は「威力ある合理性の基準」としていますが、立法裁量のないタイプの通常の審査類型と、制度準拠審査とでは、判断構造が異なるので、通常の合理性の基準や実質的関連性の基準と同じように整理することには違和感があります。
(私の講義では、わかりやすさの観点から、このあたりの説明を省略して、青柳元教授のように説明していますが。)
そうすると、ご質問1については、国籍法違憲判決を踏み台にするのであれば、立法裁量は必須ではあると思いますが、当該事案が立法裁量の問題にならないものなのであれば、「立法裁量のある国籍法すら厳しいのだから、もっと厳しくあるべきだ」という文脈で用いるべきかと思われます。
次に、ご質問2についても、さらなる厳格な基準を用いることもありえますが、そのあたりは、学説のアプローチ(二重の基準論の援用や、アメリカ連邦最高裁のような特に疑わしい区別論など)を「踏み台」にするべきです。
2016年8月28日