労働法速習講義について

連続の投稿で申し訳ありません。

1 232pの解説1についてですが、二行目までは懲戒当時に使用者が認識していなかった場合に、非違行為を追加できる特段の事情の話をしているのに対し、三行目以降は認識していた場合の話をしています。そうだとすると、認識があった場合もなかった場合も、要は処分理由となった非違行為と同じようなものであれば、追完が許されるということでよろしいでしょうか。

4 233pのネスレ事件を論文で書く場合には、解説の①から④は社会的相当性の枠組みの中で検討するのでしょうか。
お時間のあるときにご教示願えると幸いです。
2016年3月29日
選択科目 - 労働法
回答希望講師:加藤喬
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
加藤喬の回答

1.ご質問1
 質問者様の理解通りとなります。
「処分理由とされていなかった非違行為」の追加主張が原則として許されず、使用者が認識していなったことが「処分理由とされていなかった」ことの一類型にすぎません。
 なお、解説1の裁判例は、使用者が認識していなかった非違行為であっても「使用者が認識していた非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属する」ものであれば使用者が無意識的に処分理由にしていたといえる(=特段の事情あり)という形で、使用者が非違行為を認識していなかった事案についても転用されます。

2.ご質問2
 ご指摘の通り、客観的合理的理由ではなく、社会通念上の相当性の枠組みの中で検討することになります。
 判例は、客観的合理的理由と社会通念上の相当性を明確に区別しおりませんが、司法試験委員会及び学説上は両者は明確に区別されておりますので、司法試験対策としては社会通念上の相当性との関係で検討するべきであると考えます。
 ただ、①~④のうち、④「期間経過に伴う企業秩序侵害の微弱化」については、客観的合理的理由でも言及しておくのが無難であると考えます。客観的合理的理由は、非違行為による企業秩序侵害と懲戒の種類・程度とのバランスに関する要件ですから、「懲戒の種類・程度」と比較するべき「非違行為による企業秩序侵害の程度」としては、非違行為当時の企業秩序侵害だけでなく、その後の期間経過による企業秩序侵害の微弱化も考慮して捉える必要があると考えます。

2016年4月7日


匿名さん
ご返信ありがとうございます、疑問が氷解しました。
今後ともよろしくお願いします。

2016年4月8日