H20の刑法の問題について

甲乙の窃盗の共謀共同正犯で甲が強盗致傷をした問題の質問です。乙の罪責で強盗については心理的因果性を及ぼしたとして共謀の射程にいれたうえで共犯の錯誤できるのが正解筋ぽいのですが、自分は共謀の射程に入らないと思い、そこできってしまい共犯の錯誤の論点を落としてしまいました。「窃盗から強盗にうつることはありえる」くらいの蓋然性をもって心理的因果性ありとして共謀の射程にいれていいのでしょうか?共謀の射程はそれくらい広いものなのでしょうか??共謀の射程の広さについて教えてください。
未設定さん
2016年3月19日
刑事系 - 刑法
回答希望講師:加藤喬
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
加藤喬の回答

 共謀は、「特定の犯罪」についてなされることが必要ですが、これは、社会的事実として特定された犯罪という趣旨であって、罪名の同一性までは要求する趣旨ではありません。
 したがって、関与者間において、社会的事実として特定された同一行為を共同することについて意思の連絡があるのであれば、罪名の認識についてずれがあっても、共謀の成立が認められます。
 例えば、Xは殺人の認識・Yは傷害の認識で共同してVに暴行を加えたところVが死亡したという事案では、Vに…という方法・態様で暴行・傷害を加えるという、社会的事実として特定された同一行為を共同することについて意思の連絡があった以上、共謀の成立が認められます。
 平成20年刑法の事案では、甲乙間で強盗についてはほぼ想定していないものの、窃盗レベルでの共謀は成立していますので、あとは窃盗の共謀の因果性が強盗に及んでいるのか、及んでいるとして強盗罪の故意が乙に認められるのか(共犯の錯誤)という処理になるのだと思います。
 何らかの犯罪行為をすることについて共謀が成立した以上、共謀した犯罪行為以外の犯罪行為が実行されたとしてもそれは共謀の因果性が及ぶかどうか(さらには、故意が認められるか)という問題にすぎません。
 質問者様の理解だと、おそらく、「強盗が行われている以上、強盗についての共謀が必要である」というものだと思われますが、罪名の如何を問わず何らかの犯罪行為を行うことについての共謀が成立している以上、あとは共謀の射程及び故意の問題として処理される、という理解で整理しておくのが無難であると思われます。

2016年4月7日

すみません、質問を読み間違えました。
共謀の因果性を検討する際には、共謀の内容及び共謀成立当時の状況だけでなく、共謀に基づき犯罪行為又はその準備行為を行ったことも考慮されます。

2016年4月7日

平成20年の事案では、乙は、住居侵入窃盗の共謀に基づき、犯行現場にまで甲を自動車で送迎することで、甲をさらに心理的に勢いづかせるとともに、犯行を物理的に容易にしているともいえます。さらに、居直り強盗の例もあるように、甲は窃盗の実行を通じてより一層心理的に勢いづけられ、現金300万円以外の財物の強取の意思を抱くに至ることも十分考えられますから、300万円窃取後の強盗にも共謀の因果性が及ぶということになるのだと思います。

2016年4月7日

「窃盗から強盗に移行することはありえる」という抽象的な可能性だけでは足りません。上記のように具体的にどういった過程で共謀の心理的因果性が強盗にまで及んだかを論証する必要があり、それができないような事案では、共謀の射程は及んでいないということになります。

2016年4月7日