共謀は、「特定の犯罪」についてなされることが必要ですが、これは、社会的事実として特定された犯罪という趣旨であって、罪名の同一性までは要求する趣旨ではありません。
したがって、関与者間において、社会的事実として特定された同一行為を共同することについて意思の連絡があるのであれば、罪名の認識についてずれがあっても、共謀の成立が認められます。
例えば、Xは殺人の認識・Yは傷害の認識で共同してVに暴行を加えたところVが死亡したという事案では、Vに…という方法・態様で暴行・傷害を加えるという、社会的事実として特定された同一行為を共同することについて意思の連絡があった以上、共謀の成立が認められます。
平成20年刑法の事案では、甲乙間で強盗についてはほぼ想定していないものの、窃盗レベルでの共謀は成立していますので、あとは窃盗の共謀の因果性が強盗に及んでいるのか、及んでいるとして強盗罪の故意が乙に認められるのか(共犯の錯誤)という処理になるのだと思います。
何らかの犯罪行為をすることについて共謀が成立した以上、共謀した犯罪行為以外の犯罪行為が実行されたとしてもそれは共謀の因果性が及ぶかどうか(さらには、故意が認められるか)という問題にすぎません。
質問者様の理解だと、おそらく、「強盗が行われている以上、強盗についての共謀が必要である」というものだと思われますが、罪名の如何を問わず何らかの犯罪行為を行うことについての共謀が成立している以上、あとは共謀の射程及び故意の問題として処理される、という理解で整理しておくのが無難であると思われます。
2016年4月7日