実行共同正犯と共謀共同正犯の区別

実行共同正犯と共謀共同正犯の区別について質問致します。
実行行為を行っていたかどうかで区別するとは思われるのですが事例問題で判断が上手くつきません。
例えば、平成24年司法試験刑事系第1問の乙については、甲の横領行為である不動産売却において必要書類及び代金の受け渡しを仲介していますが、出題趣旨等では実行行為自体を行っていないとして共謀共同正犯を検討するとされています。
個人的には売却行為の一部を担ったのであるから実行行為の一部も行ったと見ていいとも思えてしまいます。これは実行行為を広く捉えすぎで、実行共同正犯となる場合を構成要件該当行為を担った場合に厳密に捉えるべきということでしょうか。
未設定さん
2016年1月26日
その他 - その他
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加藤喬の回答

 ご指摘の通り、実行共同正犯と共謀共同正犯との区別では、実行行為とは「構成要件該当行為」と捉えるべきです。

 構成要件結果発生の現実的危険を有する行為、という表現もされますが、これは、主として未遂の領域で用いられるものですので。

 実行行為とは、構成要件に該当する行為ですので(cf実行の着手は、構成要件に該当する行為であることを要しない。by 実質的客観説)、共謀者が構成要件に該当する行為を行ったかどうかが基準となります。

 横領罪についていえば、通説的な理解では、売買の申込みの意思表示が、不法領得の意思の外部的発現として「横領」(すなわち、構成要件に該当する行為)に当たることとなります。

 したがって、乙が売買契約の意思表示を行っているかどうかで判断することになります。
 
 確かに、平成24年の事案では、乙が、甲から交付された土地売却の必要書類(おそらく、契約書も含まれている)をEに交付しています。乙が売買契約を代理したとみるのであれば、代理人行為説からは、売買の申込みの意思表示を行っているのは乙ですから、乙は実行行為を行っているといえます。

 しかし、平成24年の事案では、乙は、何ら交渉権限等がなく、単に契約書類の授受を仲介しているにすぎませんから、単に甲の売買の申込みの意思表示を伝達するための使者(使者のうち、完成した意思表示を伝達する伝達機関)にすぎません。

 このように、乙は、売買契約の申込みの意思表示を行っているとはいえま
せんから、実行共同正犯とはならないこととなります。

2016年1月26日