回答が遅くなりまして申し訳ございません。
1.留保付き承諾がなされた場合における労契法16条の検討の有無
出題の趣旨には、「・・その上で,X3及び(前記留保付承諾が認められないとの見解を採った場合の)X2に対するY社の解雇が有効かを検討する必要があるが,その際には,解雇権濫用法理(労契法第16条参照)の適用に当たって・・」とあります。
つまり、留保付き承諾をしたX2についての解雇の有効性が労契法16条との関係で問題となるのは、留保付き承諾を否定する見解(民法528条を適用して、承諾としての効果を認めない見解)に立った場合です。
これに対し、留保付き承諾を肯定する見解に立った場合、承諾を無視した変更解約告知としての解雇は承諾を無視したことを理由として無効になります。
したがって、労働条件の変更の合理性は問題となりません(労契法16条の問題となりません)。
2.「労働条件の変更に合理性がない場合,解雇は無効になる」
まず、変更解約告知は「労働条件変更の手段」ですから、目的である労働条件変更に合理性がないのであれば、労契法16条により無効となります。これは、解雇権濫用法理としての効果であると思われます。
次に、「労働条件の変更に合理性がないことを解除条件とする承諾として有効」という記述と「労働条件の変更に合理性がない場合,解雇は無効になる」という記述の関係性についてですが、労働条件変更に合理性がない場合に、解雇が無効となっても、労働者が労働条件変更に承諾したことになるのであれば、変更解約告知後の労働条件は、変更された内容のものとなります。申し込まれた労働条件変更の内容が不合理であっても、就業規則の最低基準効に違反しない限り、これに対する承諾がなされることにより労働条件変更合意の効果が認められるのが原則だからです。
3.平成26年設問1のX2
留保付き承諾を肯定する見解からは、これを無視してなされた変更解約告知としての解雇は無効となります。
ただ、解雇無効後のX2の労働条件の内容については、従前通りのものなのか、それとも変更されたものとなるのかということが、申込まれた労働条件の変更内容の合理性によって左右されます。
合理性があるのであれば、承諾により、変更された労働条件となります。これに対し、合理性がない場合には、承諾の失効により、従前通りの労働条件のままです。
ですので、理論上は、申込まれた労働条件の変更内容の合理性も問題とあなりますが、変更解約告知後のX2の労働条件の内容についてまでは問われていない(出題の趣旨等で言及がない。本試験では、ここまで問われていないであろうと判断して飛ばしました。)ので、ここまでは言及しておりません。
2016年1月31日