有害表現の規制

有害表現に対する規制が主題規制であるのに厳格審査基準ではなく定義づけ衡量により審査されるのはどういう理屈ですか?
判例法理ですか?
未設定さん
2021年5月7日
法律系資格 - 予備試験
回答希望講師:伊藤たける
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
伊藤たけるの回答

有害表現すべてではありませんが、名誉毀損、わいせつなど、一定の類型を「定義」することで表現の自由の保護範囲から除外する手法は、定義づけ衡量と呼ばれています。
定義づけの段階で利益衡量が済んでいるため、保護範囲から除外されます。
これにより、明確性を担保するというメリットがありますが、本当に明確と言えるのかは議論があります。
わが国の判例は、定義づけ衡量に近い手法ではあるものの、定義があいまいである点が批判されています。
そこで、伊藤正己裁判官が、最3小判昭和58年3月8日刑集37巻2号15頁の補足意見で、ハード・コア・ポルノと準ハード・コア・ポルノの2類型を提唱していますが、多数意見には取り込まれていませんし、これ自体も準ハード・コア・ポルノについては明確性がないとの批判もあります。

2021年5月12日


未設定さん
個別的利益衡量の結果を定義化する定義づけ衡量は衡量の段階でどの程度審査が厳格に行われているか不明確で、緩やかに審査された衡量の結果が定義として示された場合、内容規制なのに緩やかな審査基準を適用することになりかねないのでは?と思いましたが、既に厳格な定義化がされているということでしょうか
また、『憲法Ⅱ 人権』(日評ベーシック)では、「低価値表現」を「表現の範囲から除外することには慎重であるべきであり、表現には含まれるとしたうえで、対抗利益によって制約が正当化される範囲を考えるというアプローチが適当である」とされているのですが、定義づけ衡量は正当化ではなく保護範囲の議論なのですか?

2021年5月12日

>既に厳格な定義化がされているということでしょうか
⇒ 厳格と評価できるかはわかりませんが、わいせつの定義、名誉毀損表現については、それなりに限定的ではないかと主桝。

>定義づけ衡量は正当化ではなく保護範囲の議論なのですか?
私は保護範囲の議論であると理解しています。
ご指摘の箇所は、定義づけ衡量で除外されなかった低価値表現(たとえば、わいせつに該当しない性的表現、残虐的な表現)のことだと思いますが、こちらは定義づけ衡量ではなく、正当化論証に進むべきではないかと思います。

2021年5月12日


未設定さん
ご回答ありがとうございます。

日評ベーシックはわいせつ表現や煽動、名誉毀損といった典型的な定義づけ衡量の射程内の表現を保護範囲には含めるべき、としているように感じます。

では仮に定義づけ衡量ではじかれない低価値表現に対する制約が問題となった場合は内容規制だから厳格審査基準に依った上で、対抗利益に関しては目的審査で考慮するという方向で検討するべきですか?低価値表現故に権利の重要性が低く、違憲審査基準が下がりLRAないし実質的関連性によるという主張は可能でしょうか

2021年5月12日

日評ベーシックの見解は、判例のように保護範囲から除外する定義づけ衡量に対する批判をしていますね。
低価値表現には様々な議論がありますので、表現の価値の高低を認める立場から違憲審査基準を下げることも考えられます。
表現の価値の高低を認めない立場からは、いわゆる間接的・付随的規制(判例のものではなく長谷部説によるアメリカ憲法判例の理解。岐阜県青少年保護育成条例事件判決の伊藤正己裁判官補足意見も同じ)の法理によることも可能です。

2021年5月12日


未設定さん
納得しました。
予備の短答が終わったら基本書や百選で低価値表現についてまた確認しておきます。
お忙しい中、ご回答ありがとうございました。
とても勉強になりました。

2021年5月13日