まず、「例えば」から始まる段落についてですが、これは、就業規則上で不合理な内容の男女別賃金表を定めており、かかる男女差別が労働基準法4条に違反して無効となる場合、あくまもで男女別賃金表全体が労働基準法13条前段により無効となるのではなく、男女別賃金表のうち女性を男性と区別している部分のみが無効となります。
したがって、労働基準法13条前段の適用後は、就業規則上の賃金規定は、男女を区別しない内容のものとなります。テキストp48の山陽物産事件がその一例です。
そして、就業規則上の、男女を区別しない内容の賃金規定は、就業規則の労働契約規律効(労働契約法7条本文)により、女性労働者の労働契約の内容を規律することとなります。これにより、女性労働者の賃金についての契約内容は、男性と同じ内容になります。
女性労働者については、就労開始日から現在に至るまで、現実の労働(民法624条1項)に基づくものとして、男性と同一水準の賃金請求権が発生していたことになります。なので、差額賃金は、これまで未払いであったという位置づけになります。
よって、未払いであった差額賃金の支払い請求が認められうこととなります(消滅時効が完成しているものについては請求棄却となります)。
「例えば」から始まる段落の次の段落については、差別的査定という法律行為を労働基準法4条違反を理由として労働基準法13条前段(基本書等では指摘されていませんが、厳密には、13条前段の類推適用であると思われます。法律行為は、「基準」ではないので。)により無効となり、13条後段(これも類推適用であると思われます)により、査定の標準値が労働基準法4条の男女同一賃金原則の具体的内容をなすものとして無効部分を補充することなります。したがって、この場合も、536条2項前段ではなく、624条1項に基づくものとして、就労開始日から現在に至るまで、現実の労働(民法624条1項)に基づくものとして、男性と同一水準の賃金請求権が発生していたことになります。なので、差額賃金は、これまで未払いであったという位置づけになります。
2016年1月11日