回答が遅くなりまして、大変申し訳ございませんでした。
甲は、Vとの委託関係に基づきV所有不動産を占有していたところ、V所有不動産を乙に売却し、さらにその後、丙のために抵当権を設定したという事案を使って説明させていただきます。
まず、先行する売却行為については、Vの所有権を侵害するものとして、横領罪が成立します。
次に、後行する抵当権設定行為についてですが、先行する売却行為により乙に対して所有権が移転しているのであれば、Vが所有者ではなくなっているため、Vを被害者とする横領罪は成立しません。
他方で、甲は、売買契約に基づく義務として、乙に対して所有権移転登記手続きをして完全な所有権を取得させるという義務を負い、それが甲・乙間の委託信任関係を成すこととなります。ですので、甲は、後行する抵当権設定行為との関係では、乙の所有不動産を乙との委託信任関係に基づき占有する者、ということになります。したがって、後行する抵当権設定行為については、乙を被害者とする横領罪が成立します。
あとは、Vを被害者とする横領罪と、乙を被害者とする横領罪の罪数関係ですが、正直、はっきりとしたことは分かりません。
同一不動産についての複数の所有権侵害であるということを強調すれば、不動産所有権のうち処分権限の一部しか侵害しない抵当権設定についての横領罪は、共罰的事後行為として、不動産所有権のすべての権能を侵害する売却についての横領罪に吸収されるという考え方もできると思います。
他方で、同一不動産についての複数の所有権侵害であっても、それぞれ被害者が異なるという点を強調すれば、併合罪という考え方もできると思います。
確定的な回答はできませんが、参考にしていただけると幸いです
2015年12月27日