情報のご提供ありがとうございます。
1 質問前半について,「市場が運送役務とすると需要の代替性がないので、これが市場にならないことはわかりました。」という部分はよく分かりませんが,矢板無料バス事件の事案を前提に考えると,想定する市場としては,①藤田合同タクシー㈲・しおや交通㈱・矢板市営バスを供給者とする矢板市内のバス運行市場と,②藤田合同タクシー㈲・しおや交通㈱・矢板市営バスのみを供給者とする矢板駅-矢板高校間のバス運行市場とで,2つの市場が挙げられます。なお,裁判例は差止請求の事案であり,事実認定は不十分であるため,白石先生の寄稿を参考に事情を補充して検討しています。
市場をよりピンポイントに捉えるならば,ミニマムな②の市場を画定するのが今回は適切でしょう。
2 質問後半について,困難化要件=「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」であるという理解を前提に回答すると,困難化要件と自由競争減殺の検討は大体一緒です。排除効果があれば,困難化要件を満たし,自由競争減殺も満たすと書けば良いです。あとは正当化理由がなければ公正競争阻害性ありと考えて良いです。正当化理由については,芝浦と畜場事件が参考になると思います。
不当廉売の条文の読み方には2説あるようです。例えば,幕田英雄著『公取委実務から考える独占禁止法』(2017年,商事法務)では困難化要件は行為要件に位置づけられていますが,根岸哲・舟田正之著『独占禁止法概説[第5版]』(2015年,有斐閣)では弊害要件(公正競争阻害性)に位置づけられています。どちらで書いても良いと思いますが,いっそ困難化要件も「正当な理由がないのに」「不当に」と合わせて弊害要件であると書いてしまった方が,答案は書きやすいと思います。
2020年4月15日