経済法平成24年について

経済法平成24年第2問について質問です。
市場をa製造販売市場とした場合、需要者が消費者・供給者がX社~E社ということになるのでしょうか。
いまいち市場の図を書くことが苦手なのですが、どうすればよろしいでしょうか。
また、aの小売市場とする場合には、需要者と供給者はどのようになりますか。
2020年2月6日
選択科目 - 経済法
回答希望講師:中山涼太
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
中山涼太の回答

ご質問ありがとうございます。個々の質問に回答する前に、独禁法学習の際の市場検討のポイントを解説しますね。
ポイントは5つあります。①市場は商流(取引の流れ)に応じて多段階に分かれること、②市場を検討する際は複数の取引段階を混ぜ込まず1つの取引段階だけを切り取ること、③どの取引段階を切り取るかによって需要者と供給者が入れ換わること、④検討対象市場は問題となる行為が影響を与える取引段階とすること、⑤行為者が検討対象市場となる取引段階の需要者・供給者であるとは限らないことです。
本問では、Aα製造販売業者(メーカー)→B卸売業者→C薬局・薬店+ネット販売業者(小売店)→D消費者(エンドユーザー)という商流があります。この商流に応じて1Aを供給者・Bを需要者とするα製造販売市場、2Bを供給者・Cを需要者とする卸売市場、3Cを供給者・Dを需要者とする小売市場と、3つの取引段階に分けることができます(①③)。
市場を検討する際は、この3つの取引段階のいずれかを検討対象市場として画定します(②)。
X社の方策『①』を例にとると、影響を受ける取引段階は上記3であり、これが検討対象市場になります(④)。そして、X社はこの市場における需要者でも供給者でもありません(⑤)。
以上を前提にご質問にお応えします。
1→α製造販売市場を検討対象市場とすると、供給者は合ってますが、需要者は消費者(エンドユーザー)ではなく卸売業者になります。
3→需要者は消費者(エンドユーザー)、供給者は薬局・薬店+ネット販売業者になるでしょう。
2→上記解説の取引段階を意識すること、X社など具体的な会社で考えず○○業者というグループで整理して図に描くことを意識すると良いでしょう。東大の白石忠志先生の『独禁法講義』という薄い本を見ると参考になるかも知れません。また、平成30年度の私の過去問解説をご覧頂くと、市場画定の学習の参考になると思います。
ほかに疑問点があれば是非ご質問ください。

2020年2月6日


匿名さん
ご返信ありがとうございます。
先生の講座を受講しています!30年の講義大変わかりやすかったです。
また市場の画定方法についても疑問が解決しました。ありがとうございます。
最後に一点質問なのですが、
先ほどの平成24年の問題なのですが、市場をα製造販売市場としてしまうと複数取引段階が混じることになるため、厳密には誤りという理解でよろしいでしょうか。
また、小売市場とした場合に、ブランド間競争をどのように論じればよいでしょうか。製造販売市場だと、供給者として現れるので論じやすかったのですが、小売市場となると供給者需要者として表れないのでどのように書くべきか悩んでいます。

2020年2月6日

ご受講ありがとうございます。α製造販売市場については、たしかに厳密には誤りだと思います。もつとも、本番では需要者と供給者が正しく画定できていれば意味が通るので、その意味では市場のネーミングが多少ずれていても心配ないでしょう。
ブランド間競争ですが、取引段階の話は市場を正しく捉え、正しく考えるための問題なので、ブランド間競争を考える上では大局的に『αとりわけ甲の取引』を念頭において、X社が供給者である場合と同様に考えて良いと考えます。ブランド間競争は商品役務自体に着目した論点なので、X社が需要者・供給者に含まれていようがいまいが関係ありません。
この問題のモデルはおそらく医薬品ネットです。下のURLを参考にしてみて下さい。
https://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/h24/h23nendomokuji/h23nendo02.html
類似のケースとしては、資生堂事件が参考になると思います。

2020年2月7日


匿名さん
①他のH24の解答(法学セミナー・一冊で完成シリーズ)を見たところ、αの製造販売市場(供給者 製造メーカー需要者 消費者)とする市場で検討することが多かったのですが、このような市場画定は問題ないのでしょうか。中山先生がおっしゃっていたように、複数の取引段階を混ざるとよくないとおっしゃっていたので、このような市場画定が気になりました。②また文献を探してみたところ、自分のリサーチ不足もあってか、見つからないのですが、中山先生のおっしゃっていた❶行為者が主体者とならなくてもよいという点❷複数の取引段階が混ざるとよくないという点についての文献等ございましたらご教示いただけると嬉しいです。

2020年2月7日

ご覧になられている法学セミナーの資料がどのようなソースなのか,私の方で確認するのは難しいので具体的なお答えはしかねますが,経済法の解説本は研究者の方の解説でも意外といい加減な部分があるので,その文献はそういうものと考えてお読み頂ければよいかと思います。解説を読み,意味が通っているのであれば問題ないのではないかというのが私の考えです。
①主体者=需要者又は供給者のことを指しているという理解でお伝えしますと,明確な文献はないと思います。これはあまりにも自明のことなので,そのような書き方がされていないのだと思います。例えば,拘束条件付取引(一般指定12項)は,行為者が検討対象市場の供給者でも需要者でもないことが条文自体から明らかです。
②も明確な文献はありません。というよりも,この部分は研究者ですらあまり明確に意識していないので,平成30年度第2問のような悪問が誕生してしまったわけです。強いていうならば,東大の白石忠志先生の『独占禁止法 第3版』(2016年,有斐閣)32頁以下をお読み頂ければ,「複数の取引段階が混ざるとよくない」理由を分かっていただけると思います。同文献39頁注40の「二面市場」に関する記載は必見です。

2020年2月7日


匿名さん
白石先生の『独占禁止法 第3版』32頁以下をコピーして読ませていただきました。ありがとうございます。
「複数の取引段階が混ざるとよくない」理由について自分が読んだ限り該当箇所が見当たらなかったのですが、中山先生的にはどこの箇所を指しているのでしょうか。ご教示していただけると嬉しいです。
また『独占禁止法 第3版』42頁にて、複数の取引段階を包括した市場ということをありうると記載されていたので、この点と複数の取引段階が混ざるとよくないということが矛盾していないか気になります。大変申し訳ありません。

2020年2月9日

白石先生の本にも,「ゆえに複数の取引段階が混ざるとよくない」という書き方がないのは確かです。私が注目して欲しかったのは,市場画定の機能や目的の部分です(33頁~34頁,47頁)。保護対象を明確化し,事案分析を行うためには,多段階の市場をまぜこぜにすることは害悪だと言えるでしょう。もっとも,これはあくまでも私の方法論ですので,腑に落ちなければ別の考え方をして下さって良いと思います。解き方に絶対はありませんからね(^^)。
42頁で白石先生が仰られているのは,少し前提が特殊なので,一般化しない方が良いです。本問に即して言えば,X社は卸売業者を介してαを売っているが,A社は卸売業者を介さず自社のαを消費者(エンドユーザー)に直売している場合に,X社とA社が競争者と言えるかという問題を論じています。そういうケースの場合は,俯瞰してX社とA社を供給者とするα製造販売市場という大きな市場を画定する方が実態に即しているということだと理解しています。確かにそのようなケースの場合は複数の取引段階を包含する市場を画定したほうが良いですが,それはあくまで例外だと私は考えます。

2020年2月9日


匿名さん
お忙しい中ご回答ありがとうございます。
先生の回答をみて納得いたしました。
経済法は市場の確定が難しいので、試験まで残りわずかですが、先生の講義を見てまた頑張っていきたいと思います。
本当にありがとうございました。

2020年2月9日


匿名さん
❶先生の最初の回答において【X社の方策『①』を例にとると、影響を受ける取引段階は上記3であり、これが検討対象市場になります(④)。】とありますが、3の市場であれば、競争回避につながると思いますが、ネット業者を2の市場で競争排除と考えることは可能ですか。❷X社の方策『②』の市場を考えると、2の市場になると思いますが、これも価格回避につながるのでしょうか。❸仮に市場を3とした場合に、ブランド内の価格競争がなくなるのは理解できますが、そこからブランド間競争まで回避されるとしてよいか悩んでいます(Xのシェアが40%であり、他社も10%台が3社いるため)。

2020年4月18日