ご質問ありがとうございます。個々の質問に回答する前に、独禁法学習の際の市場検討のポイントを解説しますね。
ポイントは5つあります。①市場は商流(取引の流れ)に応じて多段階に分かれること、②市場を検討する際は複数の取引段階を混ぜ込まず1つの取引段階だけを切り取ること、③どの取引段階を切り取るかによって需要者と供給者が入れ換わること、④検討対象市場は問題となる行為が影響を与える取引段階とすること、⑤行為者が検討対象市場となる取引段階の需要者・供給者であるとは限らないことです。
本問では、Aα製造販売業者(メーカー)→B卸売業者→C薬局・薬店+ネット販売業者(小売店)→D消費者(エンドユーザー)という商流があります。この商流に応じて1Aを供給者・Bを需要者とするα製造販売市場、2Bを供給者・Cを需要者とする卸売市場、3Cを供給者・Dを需要者とする小売市場と、3つの取引段階に分けることができます(①③)。
市場を検討する際は、この3つの取引段階のいずれかを検討対象市場として画定します(②)。
X社の方策『①』を例にとると、影響を受ける取引段階は上記3であり、これが検討対象市場になります(④)。そして、X社はこの市場における需要者でも供給者でもありません(⑤)。
以上を前提にご質問にお応えします。
1→α製造販売市場を検討対象市場とすると、供給者は合ってますが、需要者は消費者(エンドユーザー)ではなく卸売業者になります。
3→需要者は消費者(エンドユーザー)、供給者は薬局・薬店+ネット販売業者になるでしょう。
2→上記解説の取引段階を意識すること、X社など具体的な会社で考えず○○業者というグループで整理して図に描くことを意識すると良いでしょう。東大の白石忠志先生の『独禁法講義』という薄い本を見ると参考になるかも知れません。また、平成30年度の私の過去問解説をご覧頂くと、市場画定の学習の参考になると思います。
ほかに疑問点があれば是非ご質問ください。
2020年2月6日