共同抵当権設定後に地上建物が取り壊されて再築され、土地抵当権が実行されたという事案において、法定地上権の成否を判断する上で問題となるのは、土地の一番抵当権者であって、土地に後順位抵当権者ではありません。
それは、土地の抵当権が実行された場合における法定地上権の成立要件の判断基準時は、土地の一番抵当権の設定時だからです。
だからこそ、百選Ⅰ第7版-89事件の解説では、最判H9.2.12が当該事案の下で法定地上権の成立を否定した理由として、「そのような場合には、第1順位で、土地と建物とを把握している状況は回復されないからである」と書かれているのです。
『土地に3番抵当、建物に1番抵当を旧建物に設置していた場合、判例の見解でいくと建物に3番抵当が設置されれば法定地上権が成立することになり従前と同一の共同抵当が形成されたとはいえないのではないでしょうか?』というご質問では、土地の3番抵当権者が新建物について一番抵当権の設定を受けることができていないのに法定地上権が成立するのかというように、土地の3番抵当権者の利益を問題にしてしまっています。
2015年11月29日