法定地上権の全体価値考慮説について

判例は土地と建物の共同抵当の場合、原則として法定地上権は成立せず、例外として「①新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ②新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について『土地の抵当権と同順位』の共同抵当権の設定を受けた等の特段の事情があれば法定地上権が成立する」と述べています。

この例外の趣旨が従前と同一の共同抵当が形成されれば不足の損害がないことであることまではわかるのですが、それなら、『旧建物と同順位の』となると思います。なぜ『土地の抵当権と同順位』となるのでしょうか?

未設定さん
2015年11月29日
その他 - その他
回答希望講師:加藤喬
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
加藤喬の回答

 共同抵当権設定後に地上建物が取り壊されて再築され、土地抵当権が実行されたという事案において、法定地上権の成否を判断する上で問題となるのは、土地の一番抵当権者であって、土地に後順位抵当権者ではありません。

 それは、土地の抵当権が実行された場合における法定地上権の成立要件の判断基準時は、土地の一番抵当権の設定時だからです。

 だからこそ、百選Ⅰ第7版-89事件の解説では、最判H9.2.12が当該事案の下で法定地上権の成立を否定した理由として、「そのような場合には、第1順位で、土地と建物とを把握している状況は回復されないからである」と書かれているのです。

『土地に3番抵当、建物に1番抵当を旧建物に設置していた場合、判例の見解でいくと建物に3番抵当が設置されれば法定地上権が成立することになり従前と同一の共同抵当が形成されたとはいえないのではないでしょうか?』というご質問では、土地の3番抵当権者が新建物について一番抵当権の設定を受けることができていないのに法定地上権が成立するのかというように、土地の3番抵当権者の利益を問題にしてしまっています。

 


2015年11月29日


未設定さん
お忙しいところ、迅速な回答ありがとうございます。

2015年11月29日